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=30.謀= 「リュネットさん 送還陣で転送は?」 「出来るんですが… 今日はあと4人しか」 これが人間界で既知の場所であれば転送魔法の使い手は離脱可能である。だが未知の場所、しかも魔界からとなるとそう簡単にはいかない。安全に人間界へ行くための座標を探すだけでもかなりの時間を有してしまう。現時点でKの居場所へ最短で行く方法は、Kと契約をしていて且つ送還術を使えるリュネットの術のみだった。 「まだ修行中の身で… 特定送還は1日10人以内でないとならないのです」 申し訳なさそうにリュネットが話す。 「くっ 人選する余裕が…」 目の前にGDキマイラが迫ってくる。控えているフリッツも得体が知れない。 「散るのが常套ですが、魔界の森林地帯で散けるのは危険… ここで戦うしかありませんが、時間をかけているとマスターが危険です」 「マスターって、あれで結構強いんだけど…。それでも危険です?」 直前に魔石将(ジュエルズ)の攻撃の要たる”トパーズ”のショハムを撃破したKの手腕を知っているリオが防御結界を張りつつリュネットに聞いた。 「ええ… マスターの秘書をさせて頂く関係で災厄戦も学んだのですが… レイエン家の現当主とその弟君は”伯爵位”の魔爵を倒しておられます」 魔王に準ずる魔爵は、爵位による序列があるわけだが、爵位が一つ上がるとクラスアップに相当する強さを得る。魔王に及ばないまでも、魔爵に成り立ての男爵位と比べた場合、伯爵位の強さは倍加では済まず、少なくとも乗倍は上の強さを持った存在なのだ。それを倒したとなると…。 「それだけではないですよ?今の奴らは… 忌々しいレイエンの子達は、更なる強さを手に入れています。そして… それを拒む存在を決して許しはしないでしょうね〜」 会話に割り込んできたフリッツが最悪な状況を補足してきた。 「更に言いますとね。今頃は貴女達の居住区も小隊規模の実験体が襲われているんですよ。忌々しい召喚術士をかつての戦友の手で屠る計画だったわけですが、心優しい私はその使い魔達も主と同じところに送ってやろうと思いましてね。そして…」 自らの優勢に気をよくしたのか、今度はエルファスとケリィの方にその歪んだ笑い顔を向けるフリッツ。 「エルファス、君はよく踊ってくれました。いや、この言い方は誤解を招きますね? ”召喚術士への復讐”と”君の主の悲願のため”にというのは本当ですよ? ただ私にはもっと大事な目的があったというだけです。そのために君は思いのままに邁進して貰いました。そしてケリィ。ウロチョロと嗅ぎ回っている犬のような君を召喚術士の元へと誘導したのも、そうすれば奴の戦力の分断や奴自身の油断を誘えるかと思っての事でしたが、いやあ!思っていた以上ですよ!奴は単独でレイエンの元へ。そして戦力分断もここまで出来れば上出来でしょう。いやあ、持つべきものは主に一途な友人と家族思い・領民思いの主君様ですねぇ〜」 一気にまくし立てるフリッツ。エルファスの主への想い、そして領民を思うケリィの動きさえ、この男は計算し利用したというのか…。 「ルリカ!館は…大丈夫かな?黒服さん達も近隣の村に偵察に行ってるんでしょう?そこにあんな奴らが小隊規模って…」 小隊規模が実際何人なのかは不明だったが、国の軍隊から類推した場合、30人前後の実験体が館に向かったことになる。 「大丈夫ですよ… わたし達が相手にしたような実験体ではないと思います。あれは出来たてって言ってましたからねー。恐らくは森で出会った"不死者”に強力な魔武具を与えて程度の部隊ですよ。それだったら…」 館にはダネルやクローザといった黒服団の最大戦力を残してきたし、白服もいる。Kの戦闘用魔物のアルソッ君やセコムンといった規格外の戦力もいる。 「無傷の方に給料三ヶ月分賭けても良いですよー。リオさん!」 「ルリカ… それって賭に負けるフラグのやつでは?」 ルリカの戦力分析に安心しつつも、不吉な予感も走るリオだったが、その予感が当たってしまっていたのは少し先の話である。
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