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=35.死鬼炎= 「時間に余裕があれば、サナに講義を受けさせたい案件だな」 迫り来る”腐敗”と”炎渦”を冷ややかに見つめながらエルゼが呟く。 「まず”腐敗”だが…」 エルゼは手のひらを地に着けると 「死鬼炎…」 無詠唱状態で、短く術式を放った。 ”ごおぉぉぉぉ!” 黒い炎が地面を伝わり、腐敗の波とぶつかると、その尽くを延焼至らしめる。 「なに… ばかな…」 フリッツの笑いが止まった。本来なら魔法の炎さえ駆逐する腐敗アメーバの波があっさりと打ち勝つはずなのだ。 「何故ここにおまえを連れてきたと思っているのだね?ここ死界には腐敗のベースとなる微生物もおらんし魔素もない。腐敗の術はその2つがふんだんになければ効力はほぼないのだよ。ここにあるのは死気のみ。それを操る私の”死鬼炎”がおまえのそれに勝るのは自明だと思うのだがね?」 「くっ!!」 腐敗が通じぬとわかり”両手”を使っての”大火炎渦”に切り替えるフリッツ。 「魔鎧の魔素も合わせての”魔炎渦”だ!焼き焦げる姿を見せろ!エルゼぇぇぇ!!」 フリッツが両腕を振り下ろす!魔炎の渦がまるで雪崩のようにエルゼに襲いかかった。 「は…はは…ははははははは!そうだ!燃えろ!その焼き焦げる姿を俺に見せろ!エルゼ!!!…え… える… な なぜだ… なぜ?????????」 =なぜ燃えんのだ!?= 荒れ狂う炎の海の中にエルゼは静かに佇んでいた。 「さて… 特別授業だ。フリッツ。私が無事な理由を答えなさい」 ”パン!”エルゼが腕を振るうと、エルゼの周りの炎だけが消えた!いや…違う。エルゼは燃えていた。ただそれがフリッツの魔炎ではなかった。 「”死鬼炎”か…」 「ふむ。よく出来たね。だが…サナだったら少なくとも腐敗を食い尽くす死鬼の炎を見た時点で…いや、この死界の特性に気がついた時点で答えているだろうがね…」 死者があの世に旅立つ世界。一部の霊属性や死の属性を持つ魔族が住まう世界である”死界”そこには人間界や魔界とは違い、死気と呼ばれるエナジー源しかなかった。魔界と通じ、強力な魔素を持つ魔族は空気のようにしか感じないエナジー。ありふれたものとしか捕らえていないフリッツに対して、エルゼはそれを術式のレベルにまで昇華していたのだ。 「”死鬼炎:魂爆”」 エルゼが言い放つと同時に、死鬼炎が魔炎を食い尽くし、そしてフリッツの本体を包む。 「この死気の炎は”魂を焼く性質”を持っている。わかるね?”どんな鎧を着ていようと、意味をなさない”という事を」 「焼き焦げるのはぁぁ 俺だったのかぁぁぁぁ!!」 ”ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ” 死界に似つかわない閃光と共にフリッツは宣言のまま爆散した。 「この死界はおまえにとっては自らの領土(テリトリー)なのだろうがね。私にとっては骨休めに遊びに来る避暑地のようなところなのだよ」 既に原型のないフリッツだったものにそう言うと、エルゼは帰還用の魔法陣を展開させた。 「残るは…」 フリッツが災厄戦時の魔爵の影であった事から想定される最悪な事態を思うエルゼ。フリッツの元主は”倒されたはず”だ。しかし魔爵以上の魔族は魂まで死滅させるのが難しい事も周知であった。 「もし”死んでいないのなら…”」 そして”魔鎧”という魔武具の出所。未完と言いながら魔素0の死界であの魔素量を放出できるとなると…。 「カミナの孫なら”解”に行き着いているだろうかね?」 思案しつつ魔法陣に入る。 「…そうか!それなら期待が出来る。そうとなれば”援軍”を早めに送るべきだろうな」 エルゼ自身が”解”に辿り着いたのか、エルゼは青白い顔のままクスクスと楽しそうに笑った。何かしらの結論を出したエルゼは元の仮面のような無表情に戻り、サナの元へと送還術を発動させるのだった。
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