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=4.旅立ちのリオ= 少年が絞り出すような声で話したのは、魔物に襲われた村の惨状だった。5歳年上の兄と村を脱出し、追ってくる魔物を撒くために危険な”暗がりの森”に入ったところで兄ともはぐれてしまった。 「そんな事が…」 少年とその村を襲った悲劇にショックを受けるリオ。 「でも、それなら警備隊とかギルドへかな…」 最も一般的な解決案である。でも… 「だめ…なんです。」 少年が握り混んだ拳を震わせた。 「少し前から村の近くで魔物を見かけるからって… 村の長がギルドに連絡したんですけど… 法外な報酬を要求されたって言われて…」 それはかつての何倍もの額であり、とても支払えるものではなかった。 「辺境聖教導団に連絡をしたら、断られたって…」 こらえきれずに大粒の涙を流す少年。 「そんな… 確かに今は大規模な襲撃への対応だから額も大きいかもだけど、その前からって…」 リオも合点がいかなかった。よくギルドの仕事をしているマスターに聞けば何か分かるかも知れないと思ったが、生憎マスターは長期の仕事に出ている。 「聖教導団も… ちょっと信頼置けないしね…」 国家方針の転換から生まれた国教の色を濃くした部隊であり、魔族との異文化交流を主体としているサロンも監視下であったため、アプローチには細心の注意がいる。 「…やっぱり、村の現状がわからないと…かなぁ?」 リオが助けを乞うように、カウンター席を見ると 「わたしは嫌ですよー」 頼んだドリンクをグビグビ飲み干してから、ルリカはそっぽを向いた。 「悪いな。リオ。俺も外せないから」 ティアも忙しそうに夜の部へ向けての準備をしている。 「ですよね… 今館にいるのは… リリーちゃんにアウルムさんか」 リリーに戦闘力は皆無。(『です!』という可愛いリリーの幻影が浮かぶリオ)アウルムは魔術師としての才や魔素量は自分以上だけど…。 (核撃主体でコントロールがって言ってたからなぁ…) 由緒ある魔族の血統のアウルムは、その中でも異端なくらいの潜在能力を持っているようだったが、彼女もまた成長途上であった。特別室にいる赤髪と緑髪の大先輩の姿も浮かんだが… (…やめておこう… この子も”食べられてしまう”かもしれない…) サキュバスの要素が色濃い先輩達は”大食らい”であるため、僅かなリスクがリオの頭をかすめる。 「わかりました。ボクが行きますよ。偵察だけですから」 少年を少し待たせ、自室で旅支度をするリオ。マスターより賜った”エルダー・ゲイザリオン”という専用の杖をギュッと握りしめる。 (なんか他人事って思えないんだよね) 少年の村は、森を抜ければ最短で2時間程度。日が暮れるまでには着ける。むしろ偵察なら暗くなってからの方が良いかもしれない。その状況を第三者を通じて聖教導団とギルドに送る。そうすれば…。リオにとって、現状における最適解であった。
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