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=52.最凶のキマイラ= 高位の魔族は殺しても死にきらない。それが伯爵位の魔爵で、更に腐蝕を操るとなれば尚更であった。故に討伐後、その殲滅には細心の注意が払われ、そして念入りに浄化したはずだったのだ。 「流石はカムア殿だ。嘘はつけないな。でも問題があった」 「…それは、領内の神獣や霊獣への襲撃と関係がありますね?」 「…襲撃? …ああ、そうか…」 Kの問いかけで、リジルは事態を把握した。確かにヘルダンの死体の細胞を合成する事でムハブゥは甦ったが、ヘルダンの特性である”腐蝕”が良くなかったために副作用とは別の意味で崩壊し始めた。そこで”聖属性”の神獣や霊獣を、その一部を合成する事で対応しようとしたのだ。それを依頼したのがエルファスだったのだが、主を想うエルファスは、フリッツの催眠もあって、かなり強引な素材収集をしてしまった。必要な素材が入手できると喜んでいたリジルは、ようやくその絡繰りに気がついたのだった。 「相性の問題があったから、様々な素材を試す必要があった。フリッツが助けてくれたんだ。彼は”半魔族”だったからね」 それもフリッツの偽装である。フリッツ自身は生粋の魔族なのだ。自身の擬態と催眠に自信があったフリッツは、更に抜け目がなかった。僅かでも見破られるリスクを考えて、魔族と人間のハーフとしてエルファスに自身を売り込んだのである。勿論、擬態と催眠を込みで。その上で、人間に擬態し、更にエルゼに擬態した。 「カムア殿に指摘される前に白状をするが、素材に繋がる”通路”を暫定的に作る事で僕の実験は進んだんだ。死んでも尚”再生力”を誇るヘルダンの死体に再生のみを機能させ、その副作用たる”腐蝕”や”魔”の力の汚染を”希薄化”するための霊獣・神獣の肉体を部分的に合成する事で”ようやく完成したんだ”」 =ただ、一つを除いてね= キマイラ・ムハブゥはKを見据え、唸り声を出し続けている。リジルはそんなムハブゥを愛おしそうに見上げると、手をサッと上げた。ムハブゥを縛っていた結界が消える。おぞましいほどの魔素が部屋中に放たれた! 「なんと… これは…」 (魔王クラスの魔素量ですか!?どれほどの霊獣・魔獣を掛け合わせたんです??) 驚くKにリジルが重ねる。 「完成を拒む一欠片のピース。それは召喚術士K…カムア殿、貴方なのだ」 リジルが手をKに向けると、ムハブゥは魔方陣を出て、のっそりとKに歩み寄り始めた。 「僕…ですか?」 「ああ、取り込んだ霊獣や神獣の一部にカムア殿との”契約”が残っていた事と、ヘルダンの肉体が記憶している貴方への恨みが合成を拒んでいる。恨みという点では、僕や兄も同じだろうと思うのだけどね。使ったパーツが貴方によって傷つけられた部位だったのだと思い出した。」 ムハブゥはKの目の前まで歩み寄ると、その巨躯を低くしてKと頭の高さを揃えた。Kを食いちぎるには、一瞬の時間ですむであろう0距離である。 「ムハブゥのために、兄の神獣のために、死んでくれないか?カムア殿!」 リジルの腕が再び上がり、そして振り下ろされた!
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