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(こっちにすみません) これは、私の人生が一変した話。 夏。天気は快晴。風もあまりなく、照りつける太陽が痛い。 家族と海水浴に来たのだ。両親と自分だけの夢のような時間。 砂浜で砂の城や父親を埋めたりトンネルを作ったり貝殻を拾ったり。 海では浮き輪に乗ったり水を掛け合ったり、親の背中に乗って少し深い所まで行ったり。 海の家では焼きそばやかき氷を食べた。幸せな時間だった。 「スモーク?もう帰るわよ〜」 母親が俺を呼ぶ。俺は波打ち際で迫ってくる波を見ていた。波打ち際にいると、なんだか吸い込まれるというか流されるというか、不思議な感覚がした。 「今行く!」 母親のもとへ行こうと踵を返した時だった。 丁度、干潮から満潮に切り替わる頃だったのだろう。 自分のいた場所まで大きな波が来たのだ。走れば逃げれたのだが、砂が足に絡まって転んでしまった。 波に呑まれた。息ができない。苦しい。 (お、かあ、さ、!おと、さ、) 海面に出ようともがく。 けれど、もがけばもがく程体力も減って、波に呑まれて。 ここで死ぬのだろうか。嫌だ、まだ生きていたい。 頭に衝撃が走る。水中でなにかにぶつけたのだろう。 そこで意識は途切れた。 「ゴホッ、ガボッ、!」 水を吐くことにより覚醒する。 ここはどこだろう。辺りを見渡すと、周りは岩があるだけであとは海。 流されて打ち上げられたのだろう。 段々、意識もはっきりしてきた。 「起きたか」 どこからか声がする。声の主を探すと、岩陰から声がした。 「誰…、ッ!?」 誰か訊こうとしたら頭に猛烈な痛みが。 きっとぶつけたのだろう。 そういえばなんだか世界が白く見える。 「アンタ、頭から結構血、出してるから無理せんといて。治してやるから、こっちに来い。」 知らない人には着いていっちゃダメと言い聞かされているが、この時ばかりはこの人を頼るしかなかった。 フラフラとそちらへ行く。 姿が見えた。 「えっ、…?!」 その姿に目を奪われる。 岩に上がっている上半身は人間の男性なのだが、海に浸かるその下半身は魚のような鰭が付いていて。 「ごめんな、気味悪いよな。」 「もしかして、人魚…なの?」 そう問うとそのヒトは頷く。まさか本当にいるなんて。物語の中だけかと思っていた。 記憶に焼き付けようとその顔を見つめる。 漆黒の黒髪、宝石のような赤い瞳、水かきのような耳、顔を少し覆う鱗。 目が離せなくなってしまった。頭の痛みなんて忘れて。 「何じっと見とるん。ほら、治すで」 そう言うと俺の頭の血を拭ってはそのヒトは己の指を切って僅かな赤い液体を流す。 「そのままじゃアンタはもうすぐ死ぬ。だから、こうすれば多分少しでも生きてられる筈やから。」 口を開けろと促されて、口を開く。 顎を持たれて、上を向く様になる。すると、その指から流れる液体を俺の口の中へ垂らす。 飲め、と言われて素直に従う。 口の中に塩のしょっぱい味や鉄の錆びたような味か広がる。 きっと人魚の血を飲む人間なんて自分以外に居ないだろう。 「これでアンタはめでたく人間卒業や。どんな効果が出るかはわからんが少なくとも人間よりは丈夫になったで。」 人間卒業?どういう意味だ。 それは表情に出ていたらしく、そのヒトは申し訳なさそうに言う。 「アンタはもう、人間でもないし俺たちの仲間でもない。 半分人間で半分人外ってことや。」 そんなの、どう両親に説明したらいいんだ。 俺の居場所はどこになるんだ。 そんな不安でいっぱいだった。 「そろそろ帰ろう。アンタのお母さんたちが心配しとる。」 そう言うと俺の手を引いて海へ潜る。息を吸う暇も無く潜ったので苦しい_と思ったら全然苦しくなくて。 人魚の泳ぎにも追いつける速さの泳ぎもできて。 「な、んで…?!すごい…!!」 「多分、それが効果やな。水中でも息ができるのと、泳ぎが速くなること。 でも、今アンタの顔には鱗が出てるから人前では泳がない方がええな。」 物語のような展開に追いつけない。 ふと、心臓が痛む。 チクッ程度の痛みだったためその時は気にならなかった。 元いた海水浴場の釣り人がよく来る場所に着いた。 三角形のようなブロックに腰を下ろす。ずっと泳いでいたので疲れたのだ。 「じゃあ、元気に暮らすんやで。」 そのヒトはそう言うと、俺の額にキスをして海へ帰ろうとする。 「待って!」 それを引き止める。 「また今度、会おうよ人魚さん!」 そのヒトは困ったように笑う。 「おう、また今度」 手を振って見送るとすぐに警察の人がやってきた。 両親にこっぴどく怒られた。とても心配してたらしい。 その後、念の為病院へ。 以上は何も無かった。 筈だった。
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