行雲紀行

-静寂-

ハンターのいない闘技場。

一頭の轟竜が放たれていた。

喰らう獲物もなく、涎をダラダラと垂れ流し荒々しく掠れた息を吐いている。

地に埋まった食料の臭いがするが、以前のハンターとの闘いの中で爪を折られ、地を掻くことが出来ない。

瀕死になっていた轟竜の上空から黒い物体が落ちてきた。

かつて食した大猪ほどの大きさほどもある、何かの切れ端のような、濁った黒色の塊。

明らかな異臭がするが、食欲がそれに勝った。

『それ』に噛みつき、喰らった。喉を通り、胃に届くと同時に、身の千切れるような衝撃が轟竜を襲った。

ハンターの仕掛けるシビレ罠など比較にならないほどの衝撃。嘔吐感、頭痛、手足のもぎ取れるような痛覚。

すべてを解き放つために轟竜は咆哮したその瞬間、血の巡りが変わりやがて皮膚も濁った黒色へ変わっていった。