行雲紀行

誰もいない海。
小さい獣と虫の巣食う崖。
この孤島が俺の住処。
ハンター達はこの俺様が持つ素敵な素材を目当てに孤島にやって来るが、いつも難なく返り討ちにする。
皆ヘロヘロになり、バテてしまうようだ。
いつもと変わらない毎日。それでも俺は充実している。とりまきの娘達がいるから。彼女達の存在が俺を癒してくれる。
そんなある日だ。

平穏が崩れる日がやって来た。
鳥が舞い降りたのだ。
鮮やかな色をしているがその派手さを売りに彼女達にちょっかいを出し始めた。
手当たり次第にキスを迫り、連続でついばんでくるらしい。
この俺のシマ(島)でっっっ！
俺は戦いを挑み、ヤツの羽を何度も水浸しにしてやった。

その後も俺に喧嘩を売ってきた鳥。ヤツが足を引きずった時、急に轟音とも呼べる雄叫びをあげた。
え？
気づいたら、
俺の四倍、五倍はあろうかという緑色の竜が降りてきた。
『ぎぃやぉぉぉぉぉう』
(私の愛人(ﾗﾏﾝ)に何をするのっっっっ！)
そして俺は火球を何発も浴び、とどめに尻尾で打ち上げられた。棘がささった。
抜けない。
何かに体が冒されてゆく。

死に物狂いで海へ飛び込んだ。
潮が痛い
痛い
意識が朦朧とするなかで、孤島よりも水に溢れた林にたどり着く。
棘は抜けたが体は痺れている。
早く洗い流さねばと思い水場にいくも汚れが落ちない。
あぁ彼女達よ
置き去りにしてごめんね。
俺は汚れた姿になっちまったよ…
それから間もなくして、水没林に紫色の水獣が現れたとの緊急報告がギルドからハンターへ流れだした。