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[8]匿名
emoji[clock]12/11 20:28
『優しい声』


これは俺が中学生の時の体験です。

恐怖感はあまり無く、今でも思い出すと不思議な気持ちになります。

中学二年の二学期に急性盲腸炎で緊急入院しました。定期テストの前だったのでよく覚えています。

明け方に腹痛を覚えてそのまま救急車で運ばれ、即日入院で手術に備えました。

手術は翌日に決まり、痛み止めを服用してその日は病室で横になっていました。

病室は6人用の大病室でしたが、入院患者は僕とその隣の人しか居ませんでした。

夕方、仕事を終えた母が着替えや身の回りの物を持って見舞いにやって来ました。

暫く話をしていると、60歳くらいのお婆さんが病室に入って来ました。
隣の人のお見舞いのようでした。

母が「これから一週間ほどですがお世話になります」と挨拶すると、
向こうも「若いですからすぐに元気になりますよ。こちらこそよろしく」と微笑んでくれ、とても感じの良い人でした。

お婆さんは、隣の人のベッドのカーテンの中に入り1時間ほど話してから帰って行きました。面会時間が終了し、母も家に帰りました。

その夜、僕は翌日の手術のことを考えて少し興奮し、すぐに眠れませんでした。

すると、隣のカーテンの中から話し掛けられました。
「やぁ、この病室に入院して来る人は久しぶりだ。ここ何ヶ月か一人だったから退屈だったよ。どうして来たんだい?」
と聞かれました。

声の感じから、どうやら先程のお婆さんの旦那さんのようです。優しい声でした。

「盲腸です。今日の朝に急にお腹が痛くなってしまって…。テストもあるんですけどね」
などと、僕は学校のことや部活のことなども話しました。

母が帰り心細かったので、話し相手が欲しかったのもありますし、相手のお爺さんの声が優しかったのでスラスラと話せました。

お爺さんは笑いながら話を聞いてくれて、
「若いというのはそれだけで素晴らしいね。大病で無くて良かったね」
と言ってくれました。

私は、悪いかとは思いましたがお爺さんにも入院理由を尋ねてみました。

「もう悪いところが多すぎて、何が悪いという訳でもないんだよ。寿命と言うには早いが、私は満足しているんだ。恐らくもう退院は出来ないだろうけれどね」

内蔵の病気を併発しているとのことで、確かに長く話していると辛そうでした。

僕は急に悲しくなって、
「そんなことはない。僕は先に退院するけれど、お見舞いにも来るし、いつか退院できますよ」
と言いました。

自分が病気になってみて、どんなに心が弱るか少しだけ解った気がしていたので、元気付けられればと思ったからでした。

お爺さんは笑いながら僕にお礼を言ってくれました。

そして次の日、僕は手術をしました。
全身麻酔だったのでその後の半日を眠ったまま過ごしていました。


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