【怪奇譚】@人面キメラ





黒服団が出会う奇妙な事件や伝承にまつわる事件。

ダネルからルリカにもたらされる人面キメラについての噂。

ダネルと共に調査を開始するルリカ。

暇つぶしに事件に挑むアキュラとグローザ。

4人が出会う謎の向こうには……




【怪奇譚@】『人面キメラ』のリメイクです。
話しの本筋は変わっていませんが、自分の今の文章力に合わせて、加筆修正を行ったものになります。

ルリカ

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[1]人面キメラ1
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 昼下がり/黒服団詰所内/ルリカの執務室



「平和ですが……少し退屈ですねー」

「そんなに退屈〜? 愛玩動物〜」

 140にも満たない身長に小柄な体格、くせっけのある茶色い髪のボブカット。
 一見しては黒服達の統括どころか、黒服にも……成人にも見えない女性――
 ――ルリカ・アマカイはぼそりと呟く。

 ルリカほどではないが、それでも145センチにも満たない。
 そして気だるそうな表情に、語尾を伸ばした独特な喋り方をする、1度見たらある意味で忘れなれない女性――
 ダネル・エイミー・キリングの髪を綺麗にカットし終えるとテーブルのコーヒーに目いっぱい手を伸ばす

「ダネルさん……そろそろちゃんと名前か団長と呼んでくれませんかね」
「そんなことより〜この本〜知ってる〜?」
 ルリカの注意など何処吹く風という様子のダネルがテーブルの上に広げたのは1冊の本――
 ――最近街で売れているという、所謂“怪奇現象”が纏められた珍しい本。
「活版印刷の向上も相まってよく売れている……噂本ってやつですよね?」
「それが〜噂じゃ〜ないみたい〜なんだよ〜」

 ダネルは本をめくると、栞が挟まれたページ――
 ――“人面シリーズ”と書かれたページを広げる。
「人面……シリーズ?」
「そうそう〜。その中の〜“人面キメラ”が〜よく目撃されるんだって〜。もしかしたら〜工房みたいな〜ものも〜あるかもだって〜」
「……わかりました。早速、準備をしましょう」
「それとね〜」
 自分も若干の興味をそそられた。
 しかし、そんなことは口にせず、準備をしようと立ち上がると、再びダネルが口を開く。
「グローザと〜アキュラにも〜話したら〜。暇つぶしだ〜って、先に向かったよ〜」

 黒服は暇人の集まりなのかと、ルリカは肩を落としながらも、出発の準備を始める。

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 夕暮れ前/噂の森


 190センチを超える身長の大柄に長いピンクの髪、腰から下げる2本の刀が戦力の高さを表す、そんな女性――
 ――グローザ・マリギナとは退屈そうに欠伸をしながらも、腰の刀に手をかけ、森を練り歩く。

 グローザとは対照的に透き通るような白い肌に、綺麗に手入れされた、緑のポニーテール。
 170オーバーと少し大柄ながらも細い手足やくびれた腰のエルフの女性――
 ――アキュラ・ステッカは周囲を警戒しながら、グローザの隣を並歩く。

 グローザとアキュラは人面キメラの目撃情報があった森を散策していると、ガサガサと周囲の草木が揺れ動く。

「アキュラ」
「分かってる」
 グローザとアキュラが揺れる草木へと視線を向ける。
 その視線の先から現れたのは、にわかには信じがたい存在――
 ――犬のような胴体から伸びる長い首の先には、確かにダネルから聞いた噂本の通りの“モノ”がついている。

「うっ!? マジでいんのかよ」
 グローザは驚きながらも、腰の刀に手をかけ人面キメラを睨みつける。
 その間にも周囲の草木から、同様の存在がワラワラと姿を現し、グローザとアキュラの周囲を取り囲んでいく。

「なんだよこれ……多すぎじゃね?」
「知らないわよ……っ!? グローザ!」

 次の瞬間、すべての人面キメラがグローザに向かって襲い掛かる。

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「なんで全部こっちくんだよ!」
 グローザは素早く抜刀すると、巨躯に似合わない素早い動きで、人面キメラの噛みつきを躱しながら、その首を斬り落としていく。

「美味しそうに見えたんじゃないの?」
 アキュラは無手のまま弓を構える格好をすると、周囲の魔力を集めて風の弓矢を作成する。

「ちゃんと援護してくれよなー」
「はいはい、わかってるわよ」
 アキュラの手から放たれた風の矢は、グローザのうち漏らした人面キメラの首元に吸い込まれるように突き刺さり、ひとつまたひとつと人面キメラの動きを止めていく。


「ふぅ……これで全部いったっしょ」
 大量の人面キメラの死体が転がる中心で、荒い息をしながら、グローザはどしんと腰を下ろす。
「これ以上出て来たら帰るわよ」
 ひと息つく2人をよそに再び、草むらがガサガサと揺れる。
「まだなの!?出てきなさい!!」
 アキュラが弓を草むらに向かって構えるが――
 ――現れたのは人面キメラではなく、ダネルを背負ったルリカ。
「ほぇ? 戦闘音が聞こえましたから……後、ダネルさん? そろそろおろしますよ?」

 ダネルをその場に降ろして、周囲の状況をキョロキョロと見渡すと。
「とりあえず、状況説明からしてもらってもいいですか?」

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[4]人面キメラ4
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「なるほどなるほど……それで戦闘になったというわけですね?」
 グローザとアキュラはルリカに一連の戦闘の経緯を伝える。
「アキュラさんは周囲の捜索を……他の群れが見つかるかもしれません」

 アキュラはルリカの言葉に無言でひとつ頷くと、周囲に魔力を解き放つ。
 風の探知――
 ――アキュラの得意とする、周囲の風を探知し、生物の動きのひとつひとつまで細かく探知する魔法でアキュラは周囲の状況を観測し始める。

 ルリカはアキュラの倒した、形のそのまま残る人面キメラに水をかけながらナイフを入れ、どんどんと解体を始める
「それでなんかわかんのか?」
「……犬歯と臼歯が発達しています。専門家ではないので詳しくは分かりませんが、これは肉食動物の特徴です」
 ふんふんとグローザは頷きながら、ナイフで臓器をつんつんと突くルリカの説明を聞き続ける。
「肉食動物は消化器官か短いですが、これはどの動物よりも極端に短いです」
「っていうと……? なんだ?」
「これだとすぐに栄養分が足りなくなって、食料が足りなくなります。恐らくグローザさんにいっせいに襲いかがったのも、より大型の“食料”を優先したせいでしょう」

 アキュラは周囲の探索を終えると、話し込むルリカとグローザの元へと歩み寄ってくる。
「3人とも……群れは見つからなかったけど、近くに洞窟があるわよ」
「そうですか……そこに巣があるか、それとも噂本の通り工場があるかは分かりませんが……」
「まぁ、行くしかねぇよな」

 4人は腰をあげると、アキュラが見つけた洞窟へと向かい、歩き始める。

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[5]人面キメラ5
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 夕刻前/噂の森/洞窟内



 4人が進む洞窟は薄暗く、もちろん日の光は入り口以外には差し込んでこない。
 
「じめじめするわね。最悪」
 アキュラは不機嫌そうな顔で文句を言いながらも、松明に火を灯し、ひとり歩みの遅いダネルに合わせて歩くグローザやルリカの前を歩き続ける。

「だったらアキュラさんがダネルさんを背負ってくださいよー。私は森に来るまでで疲れました」
「嫌よ。てか、グローザが背負えばいいじゃない」
「おめーら、文句しか言わねーな。鍛え方がたんねーんだよ」
「はいはい、悪うごいざいましたー。私はあんたみたいにムキムキになりたくないからね」
 
 軽い文句を三者三様に吐き続けながら洞窟を進んでいると、急にダネルが3人の前へと飛び出る。
「何か〜来るよ〜」
 ダネルの言葉に3人が暗闇に目を向けると同時に、洞窟をかすかに揺らす地響きが聞こえる。
「こんな動きにくい所で……グローザさん! アキュラさん!」

 ルリカが腰のホルスターのボタンを外しながら、アキュラとグローザにも戦闘態勢を呼び掛けた途端、そっとダネルが手を挙げる。
「いいよ〜。私が〜やるから〜」

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 ダネルが体内から魔力を放出させると、周囲の暗闇を飲み込むほどの黒い渦が広がり始める。

 黒い渦――
 ――ダネルが使用する、どの系統にも属さない、見る物に不安や恐怖といった感情を植え付けるようなどす黒い魔法。
 そんなものをダネルは前面へとどんどんと広げていく。

「きたね〜」
 正面から人面キメラの群れが迫るのが、暗闇に目が鳴れた4人の目にぼんやりと映る。
「ダネルさん。よろしくお願いしますよ」
「おっけ〜〜」
 人面キメラがダネルの広げた渦に触れると、沼にハマったように渦の中へと沈み込み…‥もがき……そして消滅する。

「それ、正面に展開したままにできるかしら?」
 アキュラの問いかけに、ダネルは振り向き無言でうなずく。
「そう。じゃぁ、奥につくまでそのまま……代わりに……」
「うにゅ〜? おおっ!?」
 アキュラはしゃがみこむと、ダネルを持ち上げ肩に担ぐ。

 4人はダネルの黒い渦を盾に、洞窟の奥から飛び出してくる人面キメラを処理しながら歩いていく。

 
 そして4人は洞窟の最深部へとたどり着く。

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[7]人面キメラ7
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 夕刻?/洞窟最深部



「……これは?」
「まぁ……工房っちゃ工房?」

 4人の目の前に広がるのは、無数の魔方陣や檻、テーブルやそこに置かれた資料。
 如何にも工房や研究所といった内装――
 ――しかし、魔方陣が掠れていたり、檻が腐食していたり、テーブルや資料は埃をかぶっている。

「ぐぇっ! なんだよもー」
 グローザが近くの扉を開けようとするが、扉はガタンと外れ、中からは埃が噴き出してくる。

「汚い……少なくとも10年以上はほったらかしね」
「人がいる気配や、人がさっきまでいた気配も全く感じませんねー」
「じゃあ、ここは全く人面キメラに関係ございませんってことなのか?」

「ちょい〜」
 3人が考えに耽る中、ダネルはアキュラの袖口をクイクイっと引っ張る。
「どうしたのよ?」
「う〜〜ん……食べた分の〜ストックが〜消えてる〜」
「ストックが消えてる?」
「生きた命なら〜渦で食べたら“残機”になるけど〜。ここに入った瞬間に〜私の〜中から〜消えてる〜」

「…………気味悪くなってきた……とっとと帰らねぇ?」

 グローザの提案に反論するものはおらず、4人は気味の悪さを残しながらも、足早にその場を去っていく。



 〜〜〜迷い家につづく〜〜〜

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[8]使用素材


キャラクターイラストは『AIイラストPlus』というアプリを使用し作成、規約に同意した上で使用させていただいております。

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