【怪奇譚】C吸血鬼ー後編ー





黒服団が出会う奇妙な事件や、伝承にまつわる事件。

闇夜に溶け込みむ不死の存在。

吸血鬼と黒服達の戦いの記録。



※世界各地にある吸血鬼伝承の中で、世界観と話にマッチするように、設定を削ったり強めたりしたてあります。

ルリカ

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[1]吸血鬼・後編1
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 深夜/ルブル市内/大橋の袂


「う〜ん......もうちょっと脂身があった方が美味しいな〜」
「そこのお嬢さん。少しいいかな?」
 捕えた“献上物”の一部を座り込み食すグラは急な呼びかけに、ゆっくりと立ち上がる。
「私、忙しいんだけど。えっ……鳩?」
 グラの目に映るのは鳩の群れ。
 そして、その中心にいる鳩がグラへと話しかけている。
「君が吸血鬼の眷属で間違いはないね?」
 グラは目を細め、不敵な笑みを浮かべる。
「ははぁ〜ん。あんたはあの女や少年の仲間って感じね」

 グラが不敵に笑うなか、グラの周囲に数匹の鳩が降り立つ。
 地面に降り立った鳩は地面へすーっと同化するように消えると、地面が一瞬青白く光を放つ。
「……何をしたの?」
「ほほほ♪ “怯え竦まず”踏み込めばわかるさ」
「この鳩! なめんなよ! っぁ!!」
 グラが踏み込んだ瞬間に足元が光り、魔力が爆散すると、その小さな体を吹き飛ばす。

「設置型魔方陣……吸血鬼や眷属、屍食鬼に反応するように作ってある。もちろん、鳩にも仕掛けてあるよ」

 吹き飛びながらも体勢を立て直すグラの眼前には無数の飛び上がる鳩が映る。

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[2]吸血鬼・後編2
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 グラは迫りくる鳩を動体視力と運動能力で回避していく。
 しかし、すぐにすべてを回避するのは無理と悟り、腕を顔の前で組んでガードを固める。
 完全に動くことを止め、地面に踏ん張るグラへと鳩たちが突撃する。
「へっ?」
 グラに突撃した鳩は、先ほどのような爆発を起こすことなく、ポトポトと地面に落下すると、バサバサと急いで飛び上がる。

「ほっほっほー♪ 傑作傑作♪」
 ガリルは、状況が飲み込めずに唖然としているグラを、腹を抱えて転げながら嘲るように笑う。
「何もない鳩を、避けて避けてガードして……最後にはその表情」
「てめぇ!!」
 頭に血が上り切ったグラは笑い続けるガリルに飛び掛かる。
 そんな状況では設置型魔方陣の事を考えれているはずもなく、再び爆音が響き、グラは無言で吹き飛ばされる。
「頭に血が上りすぎたのか? また1からやりなおしだね♪ ほら、おいでおいで〜っと……」

 ガリルは再びグラを嘲笑し、馬鹿にする言葉をかけると、飛び上がりグラの後方に目を向ける。
「さて、時間稼ぎは十分……眷属の少女よ“後ろに”気を付けたまえ。もう腹に蹴りは嫌だろう?」
 グラはガリルの言葉に“あの時”の断に受けた膝蹴りの痛みを思い出しながら、咄嗟に後ろを振りむく。
「誰も……いない?」
 グラの後ろに広がるのは、ひたすらに広がる夜の闇。
 “騙された”……そんなことを考える間もなく、背後から強力な電撃が走る。

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[3]吸血鬼・後編3
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 ガリルは倒れこむグラの頭上を、まるで嘲笑うかの様に飛びまわる。
 周囲の鳩たちは風魔法でグラの体を切り裂いていく。
「くぅっ……」
「頑張ってもらってるところ悪いが……おっと」
 グラは頭上のガリルへと飛び掛かろうとするが、ガリルはひらりと身を躱す。
 グラが着地した途端、三度の設置型魔方陣が爆発し、グラは吹き飛ばされる。

「敵の話など聞くものではないが、まあ今回は聞きべきだと思うが?」
 ガリルは地面に横たわり動かないグラへと話を続ける。
「まず、此処にいる“鳩”は“全て”私の魔法で作ったものだよ。この時点で、最初から君には“負け”か“引き分け”しかない」

 ガリルは既に戦意を喪失しかけているグラの背中へ止まると、翼に魔力を込め始める。
「勝ちが無い状況で戦うかい? そのうち吸血鬼ハンターもやってくるがね」
「ハン……ター?」
「ほほほっ。ハンターと言ってもそこまで物騒なものではないよ。協力的な吸血鬼にはね」

 ガリルは翼を羽ばたかせ、飛び上がると、周囲の鳩たちを魔力に変えて、一手に集約させる。
「本人も知らない生態、吸血の為の人員紹介……まぁ、いろいろとやってくれるさ。ただし……」
 ガリルは周囲に魔力をばらまくと、グラの周囲の地面が青く光を放つ。
「殺す手段も、それはそれは誰よりも心得ている集団だ」

 ガリルの言葉に、グラは完全に戦意を喪失した様子で気を失う。

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[4]吸血鬼・後編4
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 同時刻/街の中心部/巨大アーチ橋


 ローランは献上用の餌集めをすることもなく、アーチ橋の欄干に肘をつき、イライラと足踏みをしながら河を眺める。
 ローランの目的は、雑魚扱いしてきた断を殺すこと。
 そしてもうひとつ……
(ワン……私を受け止めもせず避けやがって……あいつも殺してやる)

「ローラン」
「あぁっ?」
 ローランは探索に戻ろうとした所を、背後から突如名前を呼ばれ不機嫌そうに振り返る。
「当りだ……ガリルさんに名前聞いといてよかった」
 ローランの目に映るのは、2m程の竜とも狼ともとれる生物――
 ――黒曜石を身に纏うその生物は、月明かりを反射しながら、ぼそぼそとつぶやき、長い尻尾をくるくるとまわし続ける。
「なんだ、お前は……」
「大人しくしててね」
 その言葉と共に、黒曜石の竜の尻尾が消える。
 次の瞬間、ローランの右腕は血しぶきを上げながら宙を舞う。

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[5]吸血鬼・後編5
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「あがぁぁぁぁぁ!! てめぇ!! ぎゃっ!!」
 突如現れた黒いドラゴンに右腕を切り落とされたローラン。
 すかさず横っ飛びし反撃しようと試みるも、黒曜石の竜は、目にも止まらぬ速さでローランの体を壁と自分で押しつぶす。

「お……まぇ…………ひっぅっ!!」
 グチャグチャに潰れた体で横たわるローランを見下ろす黒曜石の竜――
 ――マウザーは人間形態に戻ると、ローランの両目に人差し指と中指を突き立てる。

「痛かった? ドライゼ君も痛かったんだろうね……」
 マウザーは、血溜まりの中で痙攣を繰り返すローランの目に突き立てた指を引き抜く。
「じゃあね」
 一言そうつぶやくと、マウザーは肉塊のようなローランの体を持ち上げ、シャツが血に濡れることも気にせず、河へとローランを投げ捨てる。

 マウザーは血が広がっていく水面を、しばらくの間、冷たく静かに見下ろす。

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[6]吸血鬼・後編6
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 同時刻/ルブル市内/広場


「凄い殺気ね、怖いわ。衛兵さーん」
 断に聞いた人相と一致する眷属――
 ――ワンと接触したアキュラが殺気をぶつけると、ワンはふざけた口調でアキュラを挑発する。
「全然、怖がっているようには見えないわね」
 アキュラが槍を構えると、ワンは呼応するように、魔方陣が彫り込まれた2本の細身の剣を腰元の鞘から引き抜く。

「大層な武器ね。眷属のワン……いや、ソニア・ベントと呼んだ方がいいかしら?」
 しばらくのにらみ合いが続く中、突然のアキュラの発現にワンは少し驚いた様子を見せる。
「ベント家の一人娘……熱や炎の魔法に秀で、剣技も優秀っと、何も行方不明者は被害者だけじゃないってことね」
「……そんな情報が何の役に立つのかしら?」

 ワンは眼前に魔方陣を展開すると、アキュラも魔方陣を足元に展開し、魔方陣を相殺する。
「意外と役に立つんじゃない? それに」
 アキュラは槍の尻を蹴ると、すっとワンに向けて構える。
「剣技も優秀って言っても、槍の優位性を崩せる程の腕前があるようには見えないわね」
「…………貴方、嫌いなタイプだわ」

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[7]吸血鬼・後編7
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「細っぽい体で意外と力があるのね」
「それはお互い様……この蛇女!」
 アキュラが突けば、ワンは器用に剣の側面に槍を滑らせ、もう片方の剣で反撃。
 2本の剣を左右で防御と攻撃に振り分けながらも、左右の役割をスイッチしての受け攻め。
 時折見せる魔方陣も、攻撃と見せかけと、てフェイクを織り交ぜながらの攻撃を続ける。

「うふふ。どうしたのかしら? 防戦一方…………!?」
 カラン……
 戦いの前の言動……それに反して防御主体のアキュラに不信を感じていたワンの耳に、背後に鉄が落下するような音が飛び込む。

 ワンは冷静に魔方陣を正面に展開しアキュラを牽制すると、咄嗟に背後を振り返る。
「ナイフ?……!?」
 ワンが音の正体……ナイフを視界にとらえる。
 同時に、咄嗟に両手で頭を覆い隠し体を丸めると、ワンの体を斬撃が切り裂く。

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[8]吸血鬼・後編8
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「ガードされましたかー……」
「あんたのせいじゃないわよ。あの女……ルリカ!!」
 咄嗟のガードで体勢が崩れたにも関わらず、ワンは2人の間へと魔方陣を展開すると、2人を分断する。

「なるほど、厄介な相手ですね。アキュラさん! プランBでー!!」
「ちぃ……癪だけど、仕方ないわね」
 ルリカからプランBと言われると、アキュラはすぐに風の槍を解除し、地面に手を付く。
「何をするつもりかしら? お嬢ちゃん?」
「!?」
 ワンはアキュラではなくルリカに素早く近づくと、蹴りで吹き飛ばす。
 すかさずワンは細剣を投げつけるが、ルリカは咄嗟に転がりながらナイフを投げつける。
「器用ね…………んっ?」
 ナイフを最小限の動きで回避したワンの足元……否、足元だけでなく周囲に魔方陣がどんどん広がっていく。
 魔方陣から風が吹き上げると、周囲の物を無造作に吹き飛ばし始める。
(強い魔法だけど……風に紛れて襲ってこれるようなものではないわね。それにこの規模ならすぐに止むかしら)

 ワンはその場に片膝をつき、周囲に炎の柱を上げると、動き回らずにその場でガードを固める。
 同時に、細剣を地面に突き立てるように、防御主体に構えを変更する。

 ワンの読み通りに、風の魔法はそこまで長くは続かず、次第に吹きすさぶ風はやみ始める。
 完全に風が止まれば、ワンは炎を解除しながらも、防御主体の構えのまま、周囲を見渡す。

 物がそこらかしこの飛び散っているが、ルリカとアキュラの姿はそこにはなく……

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[9]吸血鬼・後編9
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「逃げた……のかしらね?」
 
 ワンは少し考えると、細剣を拾い上げ鞘へと納める。
(ヒット&アウェイ? まぁ、追いかける必要はないわね……それよりも)

 ワンは近くの家を見渡すと、一つの家に目をむける。
(少し魔力と血の補給をさせてもらおうかしら……んっ?)
「はーい、助っ人登場」
 声の主――
 ――いつの間にか忍び寄っていたアリスは、歩き出そうとするワンの肩を叩く。
 ワンは素早く剣を抜き、振り返ろうとするが、アリスは素早く脚をかけ、ワンに尻もちをつかせる。
「集中力も体力も魔力も、そこそこ使った感じかしらね?」
「あら、貴方は……うふふ、卑怯なのね」

 倒されてもなお、不敵な笑みと挑発をするワンを見下ろしながら、アリスは掌へと電気を集め始める。
「“吸血”なんていう必殺技を持ってる方が卑怯じゃない?」
「うふふ。そうかもしれないわね」
 不敵に笑うワンは、ポケットから何かを取り出そうとする。
 アリスはその動きに瞬時に反応し、掌に集めた電撃をワンへと振り下ろす。

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[10]吸血鬼・後編10
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 戦闘班と眷属達の戦闘と同時刻/とある森林奥地/元マヨイガ近く

「全く……妾は何度ここに来ねばらんのか」
「あら? 前回が初めてじゃないのね?」
「うむ。痛い目に合っての……痛いのが苦手だというのに」
「……ではこれもあなたの物かしら?」
 シーズと断がにらみ合う最中、シーズは胸元から血の入った小さな小瓶を取り出す。
「この家は様々な人を喰っておるからの……まぁ、妾も血を流したのは事実じゃが」

 シーズは小瓶を開けると、小瓶を高く掲げ、ゆっくりと傾け中の血を口元へと流し込む。
 すべての血を口へと流し込み、飲み込むと、口元に付着した血を腕でふき取る。

「それなら合点がいくわ。私はこの血を飲んでから強くなったの」
「ならそれは妾の血ではないの」
 予想外の返答に不思議そうな顔をするシーズ。
 そんなシーズ他所に、断はカンテラを足元に置き、腰元の脇差を捨て、帯をゆるめる。
「その証拠を見せてやろう」

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[11]吸血鬼・後編11
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 一見隙だらけの断にシーズが飛び掛かると、断は素早く帯を投げつける。
(目隠し!?)
 シーズは腕を振り上げ長い爪でマフラーを切り裂くが、断の姿はどこにも見当たらず。

「ちぃ! 逃げた!?」
「目方は妾と同じぐらいか」
「っ!?」
 キョロキョロと辺りを見渡すシーズの背後から声が聞こえると、そっとシーズの両頬に手が添えられる。
「経験不足……といったところじゃの」
「このっ!」
 シーズは勢いよく背後へと爪で切りかかろうとするが、断はその勢いと反対方向にシーズの首を捻じる。
 ボキボキとシーズの頸椎が砕ける音が響き渡ると、シーズは口から血の泡を吹き、ガクガクと地面に崩れ落ちる。

「妾の力は生まれつきではのうての……」
 断は崩れ落ちてなお、再生を始めようとするシーズに向けて話しかけながら、カンテラを手にする。
「鍛錬の成果や戦闘経験は血を飲むだけでは、会得不可能であろう?」
 断はカンテラの油を、地面に横たわるシーズへとたっぷりと浴びせると、火種をシーズへと投げ落とす。

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[12]吸血鬼・後編12
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 吸血鬼事件から3日後/昼/黒服団詰所内/ステアーの自室


「にゃにゃぁ……そろそろ頭を上げて欲しいにゃ〜」

 中肉中背で猫耳と尻尾が特徴の小柄な男性――
 ――猫又のステアーは困り果てていた。
 
 マウザーが先の暴走の件を謝りに来たこと自体は、彼女の性格を考えれば納得のいくこと……
 ……しかし、部屋に入ってくるなり、土下座から始まる謝罪が、もうかれこれ10分以上続いている。

「もう怒ってにゃいんだけど……うにゃ!! わかったにゃぁ!!」
 ステアーはテーブルの上に置いた、2つの木箱をマウザーの前に置くと、床に額をつけるマウザーの頭を無理やり上げる。
「この甘いのを魔力使いすぎて寝込んでるダネルに! こっちの粥を街の病院に移動したドライゼにもってけにゃー!!」
「そんなんで……いいんですか?」

 ステアーはポンポンとマウザーの頭を叩くと、軽く額にデコピンをする。
「もう怒ってないっていってるにゃー。というかこれ以上土下座してると、僕がやめてくれって土下座するにゃー!!」



 〜〜〜ハコにつづく〜〜〜

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