【怪奇譚】Dハコ





黒服団達が出会う奇妙な事件や、伝承にまつわる事件。
ルリカ

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[1]ハコ1
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 朝/暗がりの森/サロンと入り口をつなぐ山道

 レヴ二家――
 ――戦争後に力を伸ばしてきた新貴族......商業貴族と呼び変えてもいいだろう。

 そんなレヴ二家の長女が住む館には心霊現象が多発する。
 それを何とか解決して欲しいと、マサダを経由して、黒服の元へと依頼が舞い込んだ。

 断は煙管を片手に昼間は静かなサロンへの道を、サロンとは逆に下っていく。

 今回の件で特殊なのは『面倒』な事を嫌う断が、自ら志願したということ。

 断の中で『面倒』よりも『好奇心』が勝ったのだ。

 森の出口には一目で貴族のものと分かる馬車。
 しかし、断の目を引いたのは、そんな豪華絢爛な馬車ではなく、その扉を開いて待っている、白い服を着た馭者の少年。

「レヴ二家のもので間違いないかの?」
「はい、ダン様ですね? アルフ・ヒッチと申します」
 アルフと名乗った緑の髪に白服の小柄な男性は、手を前に揃え断へと深く頭を下げる。
「どうぞ馬車へ......質問等おありでしょうが、それは向こうに着いてから」

 断は煙管の火を消すと、馬車のステップへと足をかけ、内装もやはり豪華な馬車へと乗り込む。

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[2]ハコ2
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 昼/ルブル郊外/アリシア・レヴニ家/本館1階の社交場

 断は社交場に案内されると、ソファへと座り込み、煙管を咥えてマッチを擦ると、葉へと火をつける。
「お嬢様がもうしばらくで来られますので、それまで概要の説明だけさせていただいても?」
「うむ。頼もうかの」

 断は小さく頷くと、部屋の中を見渡す。
「心霊現象と呼ばれる現象『物が勝手に飛ぶ』『足音が聞こえる』等の現象が、ここ1ヶ月程前から別棟だけで発生しています」
「土地自体は同じであろう?」
「はい、馬牧や本館、別棟。全て同じタイミングで同じ者から買い取ったものです」
「売り手は?」
「国です。戦後の荒れた土地を館ごと買い取った物だと聞いています」
「…………」

 断は思考を巡らせながら、煙を燻らせると部屋を見回す。
 ビリヤード台、軽食、見慣れない偶像、絵画、目の前でピシッと直立するアルフ……
「のう、アルフよ。その偶像は……」
「あれですか? レヴ二家が進行する戦いの神『ヴィシャ』です……もしかしてあれが何か?」
「いや。正式な神が何かを起こすなどは……」
「おまたせー!!」
 断が考えを巡らせる中、ドアが開く音と共に、女性の声が室内へと響き渡る。

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[3]ハコ3
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「やぁやぁ、遅くなって済まない。新しい神父を連れてきたよー」
 小綺麗な服に身を包み、耳をピコピコと動かす笑顔が似合う女性――
 ――アリシア・レヴ二は神父の男と共に部屋へと入ってくると、ソファに座る断へと一目散に駆け寄ってくる。
「君が断だね? ほむほむ、綺麗な顔に、綺麗な召し物だねー」
「ほう。着物の良さが分かるとは、良いセンスをしておるの」

 アリシアが断へと手を差し出すと、断も手を差し出し握手をする。
「色々と話したいこともあるが、とりあえず事件の解決が1番! 神父まで連れて来たんだからねー」

 アリシアの言葉に、断は赤い髭を蓄えた神父へと目線を向けると、神父はひとつ頭を下げる。
「こんにちはダン様。私はビシャの教会の神父であります。ビシャの加護がありながら、不穏な現象が起こるという……」
「加護? 加護と言ったかへ?」
「えぇ……そうですが」
 加護という言葉にヒントを覚えた断は、神父の話を遮り、ゆっくりと立ち上がる。

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[4]ハコ4
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「質問じゃ。ビシャの加護とはどのようなものかへ?」
「ビシャの加護ですか? 色々とありますが、ビシャは戦いの神ですので、戦争、商業の争いに加護をもたらすとされています……少し失礼」
 神父はテーブルのコップを手に取り、水を1口飲むと、再び口を開く。
「それと最も特徴的なのは、魔と戦い、魔を払うとされています」
「魔と戦う……」
「はい、一般的な悪魔祓いのようなものですが、ビシャは苛烈な争いを……」

 断は顎に手を当てしばらく考え込むと、顔を上げ、口を開く。
「あいわかった。ビシャという神……そして、事件のあらかたの顛末もの」

 断の言葉に3人は驚きの表情を浮かべ、アリシアの耳の動きもピタリと止まる。

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[5]ハコ5
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「分かったというのは、心霊現象の発生理由がですか?」
「あくまで推測であるがの……もしかしたら呪物の様な物があるのやもしれん」
「呪物?」

 断は窓から見える別棟に目を向けると、神父へと目を移す。
「妾達の目には見えぬ、魔と神の戦い……とでも言ったところかの」
「もしや、ビシャの加護が負けていると?」
「正確には押されていると言うところであろう。初めは勝ったおったのだろうが、今はお主の言う苛烈な争いの途中と言ったところかの」
 断は話を続けながらアタッシュケースから脇差を取り出す。
 それを見たアルフは腰から下げた剣を1度抜き、刀身を確認すると、納刀する。
「そして、その苛烈な争いが別棟で起こっているのではないかの」

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[6]ハコ6
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 昼/ルブル郊外/レヴニ家/別棟1階のホール



 別棟のホールへと移動した4人は、何もないだだっ広いだけのホールをしばらく眺める。
「ここか……何もないの」
「あぁ、危ないから物は片付けてあるよ。何が飛んでくるかわからないからねー」
「私は自衛できないので助かります。それではアリシア様、少し探ってみます」

 神父はホールの床や壁、天井様々な場所へと魔力を込めた手をかざす。
 そして、その手は天井をさして止まり、ゆっくりと目を開く。
「何か見つかったかえ?」
「天井裏……あの辺りに少し淀みが……」

 神父の言葉を聞いた4人はゆっくりと天井へと目を向け、しばらく無言で天井を見つめる。

「アルフよ? ここの天井裏はどうなっておる?」
「こちらの方はなんとも……本館の様に使用人の部屋になっていたりもしないですし。お客様が来る場所なので、もしもの為に荷物起きにもなってはいないです」
「なるほどの……それにしても天井裏とは厄介よの」
 断の“厄介”という言葉に、アルフはコクリと小さく頷く。

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[7]ハコ7
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「厄介かい?」
「えぇ、自分もダン様も薄暗くて、狭くて剣が振り回しにくい屋根裏では……」
「これは仕方ないの。魔法使いを呼んでくるかの……!?」
「魔法使いかい? それなら呼ばなくて結構!!」

 自信満々のアリシアの声に断が振り返ると、アリシアは両手を天井へと掲げ、数本の魔力の糸を天井へと差し込む。
「私はこれでも魔法学校の講師だ。それに、自分の家の事に、私だけ傍観者という訳にはいかないからねー」
 天井へと突き刺さった魔力の糸は、神父が見つけた淀みの周辺を、熱を持ちながら、グルグルと円を描き始める。
「危ないから。その淀みやらとやらの周りだけ落とすよー!」
「ほぅ。案外器用じゃの」
「まあねー……というかもう支えきれないから落とすよー!!」

 天井の一部がぐらぐらと揺れ始めると、アリシアは糸を一気に束ね持ち、投網を引っ張るように一気に天井を引き抜く。 
 天井の一部はあっけなく抜け落ちると、床へとぶつかり、大量の瓦礫と埃を舞い上がらせる。

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[8]ハコ8
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「ほむぅ……一部でも結構危ないねー」
「お嬢様! もっとゆっくり落としてください!」
「おい主等……何かおるぞ」
 瓦礫や埃の中に鎮座するのは、手のひらに収まるほどの小さなハコ――
 ――ドス黒い『ハコ』は、まるで瓦礫の方が『ハコ』を嫌っているかの様に鎮座している。
「あれが……!?」

 アルフが箱へと近づこうとした途端に、ハコは重力に逆らって空中へと飛び上がる。
 それと同時に、4人の背筋にゾクっとさせる、重く暗い魔力を帯びる。
「お嬢様!下がっていてください!」
 アルフ咄嗟に腰の剣を抜き、アリシアを後ろに下げると『ハコ』へと飛びかかるが、それよりも速く断が脇差を抜き、『ハコ』へと斬りかかる。
(速い!それにこの瓦礫の中を一直線に……)

 断の脇差は真っ直ぐに『ハコ』を捉えるが、脇差は『ハコ』の硬さに弾かれ、断は小さく舌打ちをする。
「アルフよ!打撃で挟んで揺らすぞ!」

 断の言葉にアルフは頷くことも無く、素早く『ハコ』の元へと移動すると、2人で『ハコ』を挟み込むように柄頭で殴りつける。

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[9]ハコ9
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 断とアルフの打撃を受けた『ハコ』は動きを止め、ガシャンと音を立て、瓦礫の中へと落下する。
「止まったかの?」
「ええ、恐らく止まっている……と思います」
 アルフは納刀し『ハコ』を持ち上げると、振ったり耳を近付けたりし、動かないことを確認すると、神父の元へと向かう。

「神父様……これが何か分かりますか?」
「少し貸して頂いても? 触って分かればよいが……」
 神父は『ハコ』を受け取ると、目を閉じ、魔力を両手に込めて、一種の霊視を始める。

「…………ひいっ!」
「ほむっ!?」
 霊視をしていた神父は、隣のアリシアもつられて叫ぶ程の悲鳴を上げると、『ハコ』を投げ捨て、その場で腰を抜かす。

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[10]ハコ10
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「何か入っていたかえ?」
「ダン様……これは貴方の方が詳しいかも知れません」
「妾の怪奇に対する知識が役にたつということかえ?」

 神父は立ち上がると、呼吸を整えて再び口を開く。
「私も聞いたことしかありませんが……蠱毒の儀という物をご存知ですか?」
「うむ。百虫を共食いさせ、勝ち残ったものを祀り、その毒を持って呪物とする……これがそれだというのかへ?」
「いえ、これはもっと強力な…………」
「なんだって言うんだい?」
 言い淀む神父に水を持ってくるようにアルフへと指示するアリシアは、我慢ができず口を挟む。

「アリシア様、ダン様、アルフ様……これはその儀式を、『ヒューマン』を使って作った呪物です」

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[11]ハコ11
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 夜/ルブル郊外/レヴニ家/本館1階の社交場

 『ハコ』の正体にゲンナリとし、食の進まない2人を他所に、1人豪華な食事を食べ進める断は、ひとしきり料理を楽しむと、口を開く。
「よくあんな話を聞いた後に食べれるね……」
「作られてしまったものはどうしようもない……未来を変えられても過去は変えれんからの」

 断の言葉にアリシアは暗い表情のままフォークを肉へと伸ばす。
 その横で、アルフは急にパンパンと自分の顔を数回叩いて気を入れると、コップの水を一気に飲み干し、口を開く。
「ダン様の言う通りです。それよりこの先の話をしましょう」
「先って……なんだい?」
「先とは言葉通りよの。あれは今でこそ大人しくなっておるが、いつ動き出すかもしれん」

 断が煙管に火をつけると、アルフは気合いを入れる為、ナイフとフォークを手に取り、先ずは食事を始める。

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[12]ハコ12
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「アリシア様、しばらくお休みを頂きたいのですが?」
「ほむっ? 別に構わないが……」
「何かあてがあるのかへ?」
「自分の故郷は魔法に優れた者が多くいます。もしかするとあれを浄化したり、処理出来るかもしれません」

 アルフの提案を聞いたアリシアは、ゆっくりと立ち上がると、棚に置いた『ハコ』を持ち上げ、席へと戻ってくる。
「ダン様もそれでよろしいでしょうか?」
「少なくとも妾にはどうする事も出来んからの」

 アリシアはアルフの方を向くと、膝に『ハコ』を置き、アルフの顔を真剣な顔つきで見つめる。
「無茶だけはしないと約束してくれよ? 危険と感じたら、どっかに捨ててきてもいいから……」
「大丈夫ですお嬢様……ちゃんと送り届けて帰ってきますので」

 断は2人の話を聞くと、再びフォークを手に取り、アリシアが残した食事へと手を伸ばす。

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[13]ハコ13
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 2日後/昼/黒服団詰所内/断の自室

断は煙管片手に手書新聞の写しを眺める。
『レヴ二家の付き人襲われる!! 犯人の目的は不明』
(アルフが襲われたのか.....しかし、あれが一方的に負けるとはの.....)

続けて記事を読み進めるが、アルフは生きており、金銭の奪取もされていない。
奪われたものは一切なし.....『ハコ』という呪物を知るもの以外は.....

〜〜〜續・吸血鬼に続く〜〜〜

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[14]使用素材


使用させていただいた素材の掲載サイトやメーカーの一覧です(敬称略)

qut アンデットとか好きだから―ーーッ!!!
https://lud.sakura.ne.jp/

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