【怪奇譚E】『百鬼夜行』
黒服団が出会う奇妙な事件や、伝承にまつわる事件。
吸血鬼の再来・・・・・
ルリカ
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[1]第1話『策』
ワンは自宅の大きな地下洞で、魔方陣を構築しながら考えを巡らせる。
【ワン】
(何故・・・何故、私の思考や行動の端っこにはいつもあの女・・・断がちらつくのかしら・・・?)
恋でも愛でも憧れでもない・・・でも憎悪とも違う・・・あえて言うなら興味・・・断がどこまで強いのかという純粋な興味。
【ワン】
(あの女の皮を切り裂いて、臓物を引きずり出して・・・そうすれば何かわかるのかしら・・・)
だからこそワンは構築する。断の為の・・・断だけを倒せる魔方陣を。
大陸中の魔導書を集めた、果ては海の向こうの術書まで。
時には痛い目を見ながら、時には身体を使いながら・・・・・
【ワン】
(この家も・・・どこの誰のものだったかしらね?)
ワンは魔方陣の構築を終えると、ゆっくりと立ち上がり、ズボンに付いた土を払うと。
【ワン】
(今日は寝ましょうかね・・・・うふふ、わくわくしすぎて、寝れるかしらね・・・)
にやりと不敵な笑みを浮かべながら、地下洞を出ていく。
〜〜〜続く〜〜〜
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[2]第2話『誘』
ある日の昼下がり
甘味処にて
断が1人でぜんざいを昼食代わりに食していると、すっと1人の女性が目の前に座る。
【ワン】
「失礼するわね」
断は手を止めずに、ぜんざいを無言で食べきると、口を拭いてワンの方を向く。
【断】
「ふむ、お主か・・・・して、何処で何をするつもりかえ?」
【ワン】
「あら?うふふ、急がせてしまったかしら?」
【断】
「食より興味が勝っただけ故」
断は立ち上がり、代金をテーブルに置くと、ワンも立ち上がり2人で店から出ていく。
2人は無言で歩きながら、断はワンに先導される形で住宅の立ち並ぶ居住区にはいり、大きな家の前でワンは足を止める。
【断】
「ほぉ、随分と立派な家よの、妾とは大違いであるな」
【ワン】
「うふふ、お褒めの言葉をいただけて光栄よ」
再び歩き出すと、家に入り、特に何をするわけでもなく、ワンの先導で地下洞へと下っていく。
【ワン】
「さて、もちろんやることはわかってるでしょうね?」
だだっ広い地下洞をぐるりと眺めると、断はトランクケースから脇差を取り出し、トランクケースを投げ捨てる。
【断】
「ふむ、こういうことであろう?」
断は腰を落とし、いつでも抜刀できる体勢をとる。
【ワン】
「そういうこと・・・でもね、私じゃ真っ向からとても無理・・・だから・・・」
ワンは両手を広げると、地面に巨大な魔方陣が浮かび上がり、紅く光を放ち始める。
【ワン】
「”百鬼夜行”起動」
ワンの号令と共に数匹の鬼が魔方陣から出現し、断へと向かって行く。
〜〜〜続く〜〜〜
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[3]第3話『鬼』
断は迫ってきた数匹の鬼を居合でまとめて切断すると。
【断】
「ふむ、百鬼夜行とは面白い名前をつけるものよの・・・・もっと来るということかへ?」
【ワン】
「うふふ・・・大当たりよ」
ワンの言葉を追うように、鬼の大群が魔方陣から飛び出しては断へ向かって行く。
断は最低限の動きで鬼の攻撃をかわしながら、1匹づつ確実に処分していく。
【断】
「しかしの・・・・こんなもの何百と来たところで結果はかわらんぞ」
【ワン】
「安心してちょうだい、そんなちょっとの数では終わらないから」
ワンは剣を抜くと魔力を込め始めて。
【断】
(ふむ、時折固いのが混じっておるの・・・しかし、それより・・・)
ワンが鬼の影から火球を飛ばすと、断は素早く脇差を振るい、火球を弾き、体勢を立て直して次の鬼を処理していく。
数時間経とうが断の動きは止まることはなく。
【ワン】
「ほんとに・・・惚れちゃうぐらい凄いわね。落ちるどころか速くなってないかしら?」
断は鬼を踏み台に飛び、ワンに向かい”気”に斬撃をのせて飛ばすが鬼がすぐさまワンの盾となる。
断に近寄る鬼は、瞬時に四肢を落とされ、殴り飛ばされ・・・・しかし、鬼はいくらでも魔方陣から補充されていく。
【ワン】
「さて、後どれだけ持つのかしら?」
ワンは楽しそうに笑いながら、時折火球を飛ばしたり、火柱で鬼ごと断を焼こうと試みる。
半日以上の時間が経てば流石に優劣がはっきりとしてくる。
【断】
「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・」
断は顔も体も服も髪もびっしょりと汗に濡れながら、鬼の攻撃を受け止め、鬼を切り裂き・・・・少しづつワンに近づこうとしてくる。
【ワン】
「あははっ!!あははっ!!もうボロボロじゃない?」
一心不乱に刀を振るう断の姿に、自分でも初めてと思える笑い声をあげると、ワンは自ら鬼の隙間を縫って断へと近づいていく。
断は脇差を大きく振り払って周囲の鬼を一掃すると、ふらふらになりながらワンをにらみつける。
【ワン】
「うふふ、汗だらけで・・・本当はもっと出してあげてもいいのだけれども・・・」
ワンは至近距離まで断に近づくと、剣を捨て両手で手刀を作る。
【ワン】
「そろそろ、終わりの時間みたいね」
ワンは手刀を断の腹部目掛けて放つ。
【断】
「はぁはぁ・・・・ぐっ!!!」
ワンの両手は断の肋の隙間に滑り込むように侵入し、ワンは断の肋骨をぐっと握りこむ・・・・
〜〜〜続く〜〜〜
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[4]第4話『狂』
【ワン】
「うふふ、生暖かいわね」
ワンはしっかりと断の肋骨を握りしめながら、歯をぐっと噛みしめ、声を押さえる断の中の感触をじっくり味わうと。
【ワン】
「そーれっと」
ワンはどこか楽し気にバキバキと鈍い音を立てながら、両手でワンの肋骨を断から引く抜く。
断は痛みに、声を上げそうになりながら、その場にドサッと崩れ落ちる。
【ワン】
「随分と我慢強いわね・・・・・まぁいいわ、もっと傷口をよく見せてくれるかしら?」
ワンは着物をはぎ取ると、断をさらしと湯文字姿に変えていく。
【ワン】
「これがその服を着るときの正装なの?うふふ、こんなものをつけているから胸が小さいんじゃないかしら?」
ワンはしゃがみ込むと、さらしを撫でながら、傷口からあふれ出る血をゆっくりと舐めとる。
断はゆっくりと落とした脇差に手を伸ばそうとするが・・・・・・ワンは立ち上がり軽く脇差を蹴り飛ばすと。
【ワン】
「あら、ごめんなさい。足が当たってしまったわ」
ワンは断の髪を掴むと、軽く引き上げて。
【ワン】
「じゃぁ、そろそろ行こうかしら」
【断】
「ぁぁ・・・いく・・・・と・・・・?」
【ワン】
「あら?まだ喋れたのね?・・・・・そうよ、見せびらかしに行くの」
ワンは断の髪を握ったまま、断の身体を引きずり始める。
【断】
「ああぁっ!!」
【ワン】
「殺してあげてもいいけど、それじゃ面白くないでしょ?・・・・私は命の恩人になるのかしらね?」
ふふふと笑いながら、階段もそのまま引きずり家の外へと出ていく。
ワンは目指した、少しでも人通りの多い場所を、少しでも人の目につきやすい場所を・・・・
今日は記念日、それを見て欲しかった・・・・たとえ真意は伝わらなくても。
やがて人通りの多い大通りに着くと、ワンの狂気に怯える人たちを他所に、完全に気を失った断を地面に投げ捨て、そのまま家路につく。
家に戻ったワンは地下洞に直行し、断の着物や脇差、引き抜いた肋骨を回収し始める。
【ワン】
「うふふ、記念品ね。どこに飾ろうかしら」
着物に着いた断の血を、着物を咥えて吸いながら、記念品の飾り場所を考え始める。
〜〜〜続く〜〜〜
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[5]第5話『誇』
黒服団詰所内、メインホールにて
【ルリカ】
「ガリルさん!!断さんの容態は?」
飛んでくるガリルを肩に着地させると、ルリカは急かすように断の容態をたずねて。
【ガリル】
「落ち着きたまえルリカ嬢、彼女は目立つ、それに目立つところに放置されていたのだよ」
ルリカを落ち着かせる様に羽根を動かしながら、周りにいるグローザとマウザーの様子を伺いながらガリルは話を続ける。
【ガリル】
「今は街の病院をかりて、私の分身体とマサダ君、ダネル嬢、それにマサダ君の教え子たちが全力で治癒をかけている・・・少なくとも死ぬことはないだろう」
ホッとするルリカとマウザーを他所にグローザはルリカとガリルに寄ってくると。
【グローザ】
「で?あたしはいつ野郎をぶった切りにいけばいいんだー?」
【ガリル】
「落ち着きたまえグローザ嬢、これは彼女と相手の問題だ。少なくとも回復・・・・・・うんっ?」
グローザと会話するガリルの様子が急にせわしなくなると、3人は不思議そうな顔でガリルを見つめる。
ガリルは自分の頭の中を素早く整理すると、少しあわただしく話始める。
【ガリル】
「分身体とも・・・予備で全員に持たせた分身体ともつながらない・・・・これは逃げたよ、断嬢は・・・よほど彼女のプライドに触ったんだろうね」
ガリルの言葉を聞くや否やグローザは詰所を飛びだしていく。
【マウザー】
「ちょっと!!待って!!」
マウザーも困惑しながら、とりあえずはグローザを追いかける、もちろんルリカも・・・・しかし・・・・
【ガリル】
「待ちたまえ!!ルリカ嬢!!」
ガリルの一喝にルリカの動きはピタリと止まる。
【ガリル】
「君は部隊の総指揮を執る立場にあるのだよ?君まで行ってどうするつもりだ?」
ガリルは煙草に火をつけろとルリカの胸元を指さすと、ルリカは大人しく煙草に火をつけ、大きく息をひと吸いする。
【ガリル】
「まずは病院の状態の確認、それから今の彼女は武器すら持っていない・・・・おそらくは相手の所に向かう前にどこかで調達するだろう」
【ルリカ】
「・・・・わかりました。私は取り合えずドライゼ君の所へ行ってきます」
そういうとルリカは吸いかけの煙草を捨てて、ドライゼのいる部屋へと駆け足で向かって行く。
【ガリル】
(さて、あの2人もルリカ嬢も馬鹿ではない・・・・しかし、私の方でも何か1手・・・・吸血鬼のお嬢さん、次は盤上の出来事では済まないよ)
ガリルは策を練りながら、外へと飛び立っていく。
〜〜〜続く〜〜〜
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[6]第6話『家』
【ワン】
「うふふ、我ながらいい出来だわ」
ワンは壁に断の着物を綺麗に皺なく貼り付け、その下に脇差と肋骨を供えるように設置すると、その前で優雅にワインを楽しんでいる。
ワイングラスが空になり、ワインを注ぎなおそうとした次の瞬間・・・・ドアが吹き飛ぶ音と共に、誰かが家の床を踏みしめながら歩く音が聞こえてくる。
【グローザ】
「邪魔すんぞー・・・・おっ?当たりかー?」
グローザはワンのいる部屋に入るなり、壁に飾られた着物を見て、ワンに目を向ける。
【ワン】
「・・・・随分と乱暴なのね」
ワイングラスを置くとワンはゆっくりと立ち上がる。
【ワン】
「よく家の場所がわかったわね」
【グローザ】
「何人がお前のこと見てたと思ってんだー?・・・・まぁ細かい場所がわかんなくて3軒ほど間違えたけどな」
ワンはゆっくりと歩き出し、地下室へ向かいだすと。
【ワン】
「上で暴れられたら迷惑なの。下についてきてくれるかしら?」
グローザは刀を抜きながらも、とりあえずはワンの先導の元、地下洞への階段を下っていく。
地下洞に着くと、ワンは2本の細剣を抜き魔力を混めると。
【ワン】
「さて、命の取り合い・・・・やりましょうか」
【グローザ】
「その前に1ついいかー?」
グローザは剣を亜竜化させながら、ワンに気になっていたことをぶつける。
【グローザ】
「とてもじゃねえけど、断に勝てるようには見えないんだけどさー・・・・どうやったの?」
【ワン】
「・・・・・いいわ、教えてあげる」
ワンはグローザの後ろを剣でさすと。
【ワン】
「そこにあの女専用の魔方陣を仕掛けたの・・・・とても楽しいやつをね」
【グローザ】
「そっかー・・・・おっけーわかった」
言い終わるが否や、グローザは刀を振り上げワンに飛び掛かると、ワンは後ろに飛んで回避する。
【ワン】
「豪快ね。防御すらしたくもないわね」
グローザの一撃は地面を抉り、砂利を巻き上げ砂埃をおこす。
その瞬間に黒曜石の竜に変化し、闇に姿を紛れさせていたマウザーが、魔方陣の近くに姿を現す。
〜〜〜続く〜〜〜
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[7]第7話『闘』
【ワン】
「もう一人!?」
現れた黒曜石の竜にワンは驚きながらも、素早くそちらへ攻撃を仕掛けようとするが・・・・
【グローザ】
「相手間違えんなっての!!」
グローザは間に割り込み、刀を振るうと、素早く防御するワンを吹き飛ばす。
すーーっとマウザーは大きく息を吸い込むと。
【マウザー】
「全部・・・抉りとる」
マウザーは全速力で地面を抉りながら進むが・・・・
【マウザー】
「っぅ!!」
魔方陣の手前で透明の防御壁にぶち当たり、はじかれる。
【グローザ】
「マウザー!!」
【マウザー】
「っ・・・大丈夫!!これも壊すから!!」
マウザーはふらつきながらも、体勢を立て直すと再び防御壁へと、何度も何度も体当たりを・・・
【ワン】
「あの子大丈夫なの・・・死んじゃうわよ?」
【グローザ】
「お前は自分の心配だけしてろっての」
直後、耳をつんざくようなキーンという音が聞こえると、魔法壁が粉々に砕け散る。
しかし、マウザーはそこで体力を使い果たし、意識をなくし、人間の姿に戻りその場に倒れこむ。
ドライゼはワンに大振りの一撃をすると、刀を放し、腕を亜竜化させる。
【グローザ】
(おーけー、残りは私が・・・・)
グローザが魔方陣のある地面に殴りかかろうとする・・・・・しかし・・・・・
【ワン】
「大人しく、その妙な術を解いた方がいいわよ」
殴りかかるより早く、ワンは地面を蹴りマウザーの元へ近寄ると首元に剣を突き付ける。
【グローザ】
「ちぃっ・・・汚いやつだなー」
【ワン】
「うふふ、それはどうも」
ワンは片手の剣を放すとマウザーの足首を掴み、引きずりながらグローザの元へと近づいていく。
〜〜〜続く〜〜〜
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[8]第8話『隙』
【ワン】
「避けたり弾いたりしないで、優しく受け止めてあげてね」
ワンはマウザーの足首を掴む手にぐっと力を込めると。
【ワン】
「今から私の武器は”これ”だから」
ワンはマウザーを振り回すと、マウザーを武器にしてグローザに殴りかかる。
【グローザ】
「っぅぅぅ!!!」
グローザは何とか受け止めようと試みるもうまくいかない。
【グローザ】
(受け止められねよー・・・だったら・・・・)
受け止めるのは不可能と悟ったグローザは、逆にもっと前に出てマウザーを身体全身で受け止める・・・首や頭部に極力ダメージがいかないように。
【ワン】
「うふふ、献身的ね」
ワンは何度も何度もマウザーでグローザを殴り続ける。
グローザは殴られ続けて殴られ続けて・・・・・ある瞬間、ぎゅっとマウザーの身体をきつく出し閉める。
【ワン】
「!?」
ワンが手をいくら引こうが離れない。
【グローザ】
「受け止めてやったぜ・・・ばーか・・・・」
その瞬間にグローザはマウザーを抱きしめたまま意識を失う。
【ワン】
「防御壁を破られたときは焦ったけど・・・・まぁ美味しく血を飲んであげるわ」
ワンはそういうとすぐに吸血行動に移らず、2人に背を向けて上の階へと上がっていく。
しばらくたってワンはワイングラスを手に地下洞へと戻ってくる。
【ワン】
「せっかくだもの。一番いいグラスを探すのに手間取っちゃったわ」
ワンはワイングラスを手に2人へと向かって行く。
【ワン】
「それにしても馬鹿ね。1人の女に付き合って命を落とすことになるなんて」
ワンが2人の元でしゃがみ込もうとしたその瞬間、地下洞を激しい光が包み、轟音が鳴り響く。
〜〜〜続く〜〜〜
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[9]第9話『再』
光と轟音の正体は強烈な雷。
雷は洞窟内を駆け巡り、”百鬼夜行”の魔方陣が設置してある地面を抉りぬいていく。
【アリス】
「馬鹿はあんたの方よ」
アリスは雷を細い槍上に束ねると、ワンに向かって飛ばす。
ワンは飛びさがり何とか回避するが、その隙にローブを纏った2人の男がグローザとマウザーを回収して素早く1階へと上がっていく。
【アリス】
「何そのワイングラス?気取ってるの?」
アリスは空間を割くとフランベルジュを取り出して、しっかりと右手に握りこむ。
【ワン】
「私は記念日を大事にする女なの・・・・それにしても・・・どうしてくれるのかしら?これ?」
ワンは地面に捨てた剣を拾いなおすと、剣に魔力を通し始める。
【アリス】
「どうもしないわよ、頭イかれちゃったの?それともお決まりのセリフってやつ?」
ワンは無言で剣を振って火球を飛ばすと、アリスは翼を展開し、高質化した羽根を飛ばして火球を打ち落とす。
【アリス】
「鳩に言われてきてみたらこの惨状・・・今日はヒーロー気取りも悪くはないと思ったけど・・・もう来ちゃったみたいね」
アリスが空間の裂け目にフランベルジュを投げ返すと、ワンはハッ後ろを振り返る。
階段を1歩ずつ、ゆっくりと降りてくる音が響き渡る。
姿を現すのは、白い服に蒼白の顔、片足を引きずりながら抜身の西洋剣を構える断。
【アリス】
「あんたいっつもタイミング悪いわね。もうちょっと私に戦わせてくれてもよかったのよ?」
【断】
「そんな調整ができるような状態に・・・見えるかえ?」
断は片手で腹部を押さえ、剣をずるずると引きずりながら、2人の間に割り込むと。
【断】
「はぁはぁ・・・前回は負けたが、あいにくと妾はまだ生きておる故」
息切れと、時折咳き込みそうな様子を見せながら、切っ先をワンに向けると。
【断】
「もう一度、勝負をしようではないか・・・のう、吸血鬼よ」
〜〜〜続く〜〜〜
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[10]第10話『舞』
【ワン】
「何かしら?・・・・本気でやるつもり?」
目の前にいる断はどこからどう見ても半死人。
ふらふらでよろよろ・・・剣を叩きこむまでもなく、指で突けば簡単に倒せそうなほどに。
【断】
「あのような事をされた故に・・・・・の」
言い終わると断は激しく咳き込み、腹部の痛さに前のめりになる。
【ワン】
「怪我・・・治してからの方がいいんじゃなくて?これじゃ赤ん坊と大人の喧嘩よ?」
【断】
「ほう・・・面白いことを言うではないか・・・・」
【ワン】
「どういう意味かしらね?」
【断】
「妾は襲撃者ぞ?・・・・・それを、体調が悪そうなので帰った方がいいですよ・・・とはの」
【ワン】
「・・・・・・いいわ、やりましょう」
ふらふらしながらクスクスと笑う断に、表情こそ変えないものの言葉の端に怒りを表しながら、ワンは剣を構える。
断は静かに目を閉じると、ワンはじりじりと近づいていく。
【断】
「・・・・・・ごほっ!!ごほっ!!」
断が咳き込んだ瞬間に、ワンは剣を横ぶりに断の元へと飛び込む・・・・・しかし・・・・
【ワン】
「っっぅ!!!!?」
断は一閃を放つ、その瞬間に体中に”気”を巡らせる。
迫りくる剣より圧倒的な速さで剣を横ぶりで大きく振るうと、くるっと1回転、ダンスを踊るように前に出る。
ワンの身体は胸から上下に分かれ、鮮血が飛び散り、ワンの身体が地面に落ちると同時に、断はその場に正座で座り込む。
【ワン】
「こ・・・んな・・・・」
ワンは上半身だけになりながらも這いつくばり這いつくばり・・・・・
【アリス】
「もういいでしょう?」
いつの間にかアリスは断の元へと寄ってきて、断のおでこをつついて断を地面に倒しながらワンに喋りかける。
【アリス】
「圧倒的・・・・だったわね。まぁ、私とやっても結果は一緒だったでしょうけどね」
アリスは断を両手に抱えると、ついでに断がどこかから用意してきた剣を時空の割れ目に閉まって。
【ワン】
「あら・・・・そうかしら・・・・?」
【アリス】
「当り前じゃない、悪魔と吸血鬼よ?そりゃ悪魔の方が強いでしょ?・・・・で、この女はその悪魔よりも強いと・・・」
断のおでこをつんつんしながら、アリスはその場を去っていく。
〜〜〜続く〜〜〜
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[11]第11話『偽』
数日後
街の病院の病室(ガリルとドライゼの交渉により貸切)
【ルリカ】
「断さん、何か言うことありますよね?」
断の寝そべるベットの横で、ルリカはむっとした表情で断に迫る。
【断】
「特にないの・・・・あれかえ?あの吸血鬼にとどめを刺さんかったことか?」
【ルリカ】
「そんなことはどっちでもいいんです!!まず、病室で暴れたでしょ!?」
断は特に悪びれることなくお茶を飲みながらルリカの話を聞き続ける。
【ルリカ】
「マサダさんやダネルさんなら百歩譲って・・ですが、一般の人を”気”で攻撃しないでください!!」
【断】
「妾の邪魔をしたのが悪い、それだけではないかの?」
【ルリカ】
(駄目ですね・・・この人は本気で何も悪気が無い分、質が悪いですね・・・・)
ルリカもお茶を一口飲むと、話を続ける。
【ルリカ】
「後、ギルドの人から剣奪い取りましたよね?私が返して謝っておきましたが・・・・ああいうのもやめてくださいよ?」
ちょっとにらみつけ気味に断を見ると、断はお茶を飲み干して。
【断】
「妾が使った故に箔が付くというものであろう・・・・しかし、あの剣は切りずらいの」
【ルリカ】
(あっ・・・完璧に駄目ですね・・・この人・・・・)
ルリカは断の湯呑にお茶を注ぐと、帰り支度をしながら。
【ルリカ】
「最後に1つだけ・・・暁さんが来てたそうですね」
【断】
「ほう、お主の耳はあちらこちらについておるのか?」
【ルリカ】
「目立つんですよ、暁さんも断さんも・・・・・で、何を話してたんですか?」
【断】
「他愛のない会話故、特に気に掛けるようなものではないぞ」
ルリカは立ち上がり、しばらくお茶を飲む断を見ると。
【ルリカ】
「わかりましたよ、断さん、おとなしくしててくださいよー」
断に念押しすると、病室を後にする。
〜〜〜続く〜〜〜
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[12]第12話『暁』
ワン宅、地下洞にて
ワンは何とか身体をつなげたが、動くだけの血も体力も足りずに壁にもたれかかり、ぐったりとしている。
【ワン】
「ふぅ・・・・・あら?誰かしら?」
階段を誰かが下ってくる音が聞こえると、そちらに目線を向けて。
【暁】
「どうも、甘味処のオーナー暁というものだよ♪」
和装の男が姿を現す。
暁はそのままワンの元へと近づいていくと、少し膝を落として。
【ワン】
「あら、そんな人気店の経営者様が私に何のご用事かしら?・・・・疲れた私に甘いものでも差し入れがあるのかしら?」
暁は懐から煙管を取り出すと、火をつけて。
【暁】
「そんなんじゃないさ・・・安心してよ、すぐに済むからさ」
暁はそっとワンの頭に手を置くと、にこりと笑って。
【暁】
「断に頼まれたんだ。君をどうにかしてほしいと」
【ワン】
「あら、それじゃ私は死ぬのかしら?」
ワンはリラックスした様子で、身体から力を抜き、壁にもたれかかる。
【暁】
「う〜〜ん・・・・殺してくれとは頼まれてないんだけどな〜・・・」
暁は煙管を吸いながら、ワンの身体に魔力を巡らせていく。
【暁】
「君には今から、場所も時間も生態系も時間の流れも・・・・色々バラバラな色々な世界を、滞在時間もランダムにジャンプしてもらう」
ワンは一度目を瞑ると、ゆっくりと目を開いて。
【ワン】
「なるほど、旅行ね」
【暁】
「そうそう旅行・・・・いきなり死んじゃうかもしれないけどね♪」
【ワン】
「うふふ、いいのかしら?私は絶対に戻ってくるわよ?」
【暁】
「戻ってきたら僕の所においでよ。好きなもの奢ってあげるからさ」
暁が喋り終わった瞬間に、ワンの姿は跡形もなく、その場から消えていて。
暁は煙管の葉を捨てるとその場を後にする。
〜〜〜百鬼夜行・完〜〜〜
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