【怪奇譚K】『首吊りの森』





黒服団が出会う奇妙な事件や、伝承にまつわる事件。

連日発生する首吊り自殺を解決するために、衛兵は各所へと協力を要請する。

アキュラとグローザは協力者と共に真相にたどり着くことが出来るのか…


アキュラ×グローザを怪奇譚内の1つのシリーズとする…その1作目となりますー
更に、本作品は怪奇譚1部『人面キメラ』及び『迷い家』のプチリファインとなりますー

ルリカ

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[1]第1話『アキュラとグローザ』
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昼食後/黒服団詰所内/ルリカの執務室


ルリカは団員より早めに昼食を済ませ、グローザとアキュラを執務室へと呼び出していた。
【アキュラ】「なんの呼び出しなの?確かに酒場で暴れたけど、誰も怪我させてないわよ?」

ルリカは軽くアキュラを睨みながらも、アキュラはすかしたような表情をしていて。
【ルリカ】「それはどうでも…いや、良くないですが……今回は2人に調査の依頼です。罰則だと思ってください」
【アキュラ】「はいはい、分かりましたー……で?何をすればいいの?」

ルリカはバサッっと2人分の手書新聞の写しをテーブルへと広げる。
【ルリカ】「最近、同じ森で首吊り死体が発見されてます……3日で1人のペースです」
【グローザ】「はあっ!?多すぎねぇか?」
【ルリカ】「ええ、既に衛兵が各所に依頼を出していて、それが廻ってきた形です」

手書新聞の写しを手に取り、じっくりとグローザが読み上げる中、行儀悪くアキュラがテーブルに腰かける。
【アキュラ】「ちなみに、断ったら?」
【ルリカ】「減俸と部屋取り上げます……とっとと行って酒場の修理代稼いで来てください!!」



続く

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[2]第2話『動かない』
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同日/衛兵詰所


アキュラは衛兵から一通りの説明を受けると、外で待つグローザの元へと帰ってくる。
【グローザ】「おう、どうだった?」
【アキュラ】「とりあえず部屋があるみたいだから、そこに向かいながら話しましょうか」

アキュラとグローザは歩を揃えながら部屋へと歩き始める。
【アキュラ】「私たちはあくまで護衛かつ制圧要因…他にも色々と雇われて動いてるみたいよ」
【グローザ】「なるほどねー。でもなんであたし達なんだ?他にも色々いそうなもんだけどなー」
【アキュラ】「サロンに来たことのある衛兵が、たまたま黒服をみて誘いをかけたそうよ。ギルドに頼むよりは安いしね」
【グローザ】「安い女に見られたもんだなー…まぁ女ばっかりじゃねえけど」

2人は用意された部屋へと入ると、アキュラはベッドに腰をおろし、グローザは飲み物を淹れ始める。
【グローザ】「で、どーすんだ?」
【アキュラ】「何もしない」
【グローザ】「はぁ?」
【アキュラ】「勘違いしないでよ。”まだ”何もしないだけ」

ポカンとしながら紅茶を入れるグローザにアキュラは丁寧に説明を始める。
【アキュラ】「他にも雇われたやつがいるなら、いたずらに調査の前線は乱さない。次の死体が見つかるまで待つだけよ」
【グローザ】「アキュラがそれならいいけどさー…一応、保管されてる死体や現場は見とかねえのか?」

アキュラはグローザから紅茶を受取ると、香りを楽しみながら口にして…
【アキュラ】「首吊りってわかってる死体なんて見ても仕方ないわよ……現場も無能が踏み荒らしてるだろうし…」
【グローザ】「?」
【アキュラ】「工作疑惑のある現場は鮮度が命なの……どうせすぐにわかるわよ」

アキュラの予感通り、2人はすぐに現場へと急行することとなる。



続く

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[3]第3話『首吊りの森』
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2日後/早朝/ルブル郊外/とある森


新たな死体が発見されたとの報を受け、アキュラとグローザは衛兵と共に、雨上がりの泥濘む地面を泥を跳ね上げながら森の中の現場へと急ぐ。
【アキュラ】「ねぇグローザ?現場についたら一喝で全員を止めれるわよね?」
小声で話しかけるアキュラにグローザは声を発さず軽く頷く。

【衛兵】「ここだ!!ここ!!」
たどり着いた先には男の首吊り死体と、距離を取って応援の到着を待つ発見者と衛兵たち…
【グローザ】「おっけー……おーい、全員動くなよー。動いたら首跳ねるからなー」

グローザが刀に手をかけながら、発する言葉に理解不能という顔をしながら立ち止まる衛兵達を他所に、アキュラは冷静に現場を見定める。
【衛兵】「なんなんだ!?お前は!?」
【アキュラ】「あんたらポンコツに変わって私が指揮をとるの…いい?」

怒りの表情を顕に詰め寄ってくる衛兵をグローザが制止すると、アキュラは首吊り死体の手前を指さして。
【アキュラ】「ねぇ?あの足跡は誰のなの?」
アキュラが指さしたのは首吊り死体につま先の向いた、サイズ的に女性のものと思われる足跡…
【グローザ】「見る限り女はいないねー。体格的にあたしらのでもないかなー?」
【衛兵】「じゃぁ…あれは…?」

衛兵達は息を飲みながら、アキュラの次の言葉を待ち続ける。
【アキュラ】「いるってことよね…私達より先に見つけたか…吊るした奴が…」



続く

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[4]第4話『日傘の女性』
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アキュラの言葉をうけ、衛兵たちが首吊り死体の周りの保存をする間にも、他の衛兵や雇われた探偵が集合し始める。

【グローザ】「人が集まってきたねー。これじゃやりにくくねぇ?」
【アキュラ】「別に変わらないわよ。あの探偵が犯人を見つけられない限りわね」

特別やることもないグローザとアキュラは、散策がてらに人混みから離れ、森の中を歩き始める。
【アキュラ】「どうせやることも無くて、昨日は死体でも見に行ってきたんでしょ?どうだったのよ?」
【グローザ】「お見通しかよー…特別変わらない首吊り死体って感じだったなー」
【アキュラ】「さっきの死体は抵抗した傷や着衣の乱れ、それに”ここ”…」
アキュラは首元を指でトントンと叩くと…
【アキュラ】「途中でためらって、ロープと首の間に指を入れようとした跡もなかった…その辺はどうだったの?」
【グローザ】「なしだなー…じゃぁ、アキュラが言ってた吊った野郎がいるって可能性は低いか…」

人気もなくなった所まで歩くと、アキュラはグローザに手を差し出し、すぐに答えるように水を差し出す。
【アキュラ】「まぁ見てるやつがいたとしても、どうやって発見してるのか…それがわからない以上は、まだ続けるわよ」
アキュラは一気に水を飲み干すと、グローザに顎で合図を送る。
【グローザ】「うん?いいのか?」
【アキュラ】「ええ、ここまで用意の良い犯人なら、ホイホイとついてはこないでしょう」
【グローザ】「わかった……おーい、そこの木陰のやつ、出て来いよー」

グローザの呼びかけに答えるように、青い髪の日傘をさした女性が木陰から姿を現す。
【女性】「初めまして、グローザさん、アキュラさん。目立つ方と聞いていましたが、一応様子見をと思いまして…」
【グローザ】(……どっかで見たことある顔だな……)

グローザが女性の事を思いだすよりも先に、女性は木陰から完全に姿を現す。



続く

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[5]第5話『協力者』
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【女性】「お2人に渡しておかなければならないものがあります」
女性は日傘を閉じると、本を片手にアキュラの方へと向かって、ゆっくりと歩き始める。

【アキュラ】「その前に…あんた誰なのよ?」
喧嘩腰のアキュラをグローザが手で制止すると、女性は本を開きながら…
【女性】「マサダ先生よりサポートを承った、魔法使いのエリザです」
【グローザ】「なるほどねー…まぁ、色々と人が動いてんのは聞いてたけど、そっちまでとはねー」
グローザは手を下げると、どうどうとふざけながらアキュラの頭をポンポンと叩き続ける。

【アキュラ】「やめなさいよ!!……で、その本はなんなの?」
恥ずかし気にグローザの手を掃うと、アキュラはエリザの持つ本に視線を向ける。
【エリザ】「これは首吊りした人の所持品です…」
エリザは本を閉じると、グローザに本を手渡しながら…
【エリザ】「この連日の自殺で唯一の生存者の方が持っていたものです…まだ意識は戻ってはいませんが」

グローザはぺらぺらと本のページをめくる。
簡易な製本…3分の1ほどのページが雑多に破かれ、一見の印象では本としての体裁を失っている。
【エリザ】「私はこの本を読んでみましたが…この一連の自殺は人為的な”何か”があるかと思うのですが…」
【アキュラ】「私だってそう思ってるわよ…ネクロフィリア…そういう”奴ら”の」
【エリザ】「そういう”奴ら”…ですか?」
アキュラの言葉に引っ掛かりを覚えたのか、女性は不思議そうな顔をするが、先にアキュラが口を開く。
【アキュラ】「いいわ共有しましょう。その代わり…先にこの本について教えてくれる?読む時間がもったいないわ」



続く

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[6]第6話『本』
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【エリザ】「何となく…はい、理解出来ました」
エリザは畳んだ日傘を軽く降ると、土からゴーレムを作り出し、ゴーレムを机替わりに、アキュラの話をメモしていく。

【アキュラ】「…それで、その本はなんなのよ?」
【エリザ】「破れている箇所が多くて全ては解りませんが…」

エリザは木漏れ日が差し込むと、日傘を開いて…
【エリザ】「圧倒的文才…強い救いの言葉……読んでいるだけで吸い込まれそうな…」
【グローザ】「宗教みたいなもんかー?」
【アキュラ】「なるほどね……」
質問するグローザの横で、1人納得したように目を伏せながら首を降る。

【グローザ】「何1人で納得してんだ?話せよー」
グローザはアキュラの頭をポンポンと叩くと、アキュラは少し恥ずかしそうにグローザの手を払って。
【アキュラ】「いい?今回だけじゃなくて自殺者は精神的に不安定な人が多いの……そんな人がその本を読んでみなさい…」

エリザは納得した様子で、日傘を肩に軽く担ぎながらゆっくりとアキュラの言葉に付け足す。
【エリザ】「はい、救いです…その救いが死で…比較的に楽に死ねる首吊りに導く言葉が、破かれた場所に書いてあったのなら…」



続く

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[7]第7話『捜索』
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夕刻/衛兵駐屯地/客室


【アキュラ】「戻ったわよ」
グローザとエリザが破れた本を見返したり、事件について考察しあう中、他の衛兵や雇われた者達との情報共有を終えたアキュラが部屋へと戻ってくる。
【エリザ】「どうでしたか?アキュラさん?」
【アキュラ】「ゆっくりと話させてもらうわ…グローザ、紅茶」

グローザが紅茶を用意する中、アキュラは席に着き、気を入れるように頬を叩くと、メモを取り出し話を始める。
【アキュラ】「私たちが森で話してる間に、もう一件、首吊りが発生してるわ。足跡も取ってあるみたいだけど、どうやら一致しないみたいね」
【グローザ】「複数犯ってことかー?」
【アキュラ】「そういうこと……エリザ?その本見せてくれる?」
【エリザ】「あっ、はい、どうぞ」

エリザは鞄から本を取り出すと、アキュラに渡す。
【エリザ】「ちなみにこの本については、私を含めた3人の魔法使いしか知りません……安心してください、全員マサダ先生の教室の者です」
【グローザ】「マサダの生徒っていうんなら安心だよなー」
【アキュラ】「ええ、そうね…」
グローザがアキュラの背中をぼんぼん叩きながら話中、アキュラは鞄を取り出し、一気にテーブルへと中身をひっくり返す。

【エリザ】「何ですか…?これ…?」
アキュラがテーブルにばら撒いたのは、木くず、葉っぱ、土…一見ゴミ…
【アキュラ】「首吊り死体が見つかった場所の物を適当に集めてもらったの…」
グローザとエリザが不思議そうに首をひねる中、アキュラは紅茶を一口飲み話を続ける。
【アキュラ】「さぁ、探すわよ。その本が事件の”凶器”なら、たぶんこの中にあるはずだから…」



続く

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[8]第8話『切れ端』
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【グローザ】「おっ!あったぞー」
【エリザ】「こっちにもまたありました」
3人が血眼になってゴミの中から探していたもの、それは本の切れ端…
【アキュラ】「やっぱりね。死体を見て、ついでに本も回収してるなら、暗闇の中、完全に回収なんて仕切れないわよ」
アキュラは見つけた本の表紙と思われる一部を指でつかみ取ると。
【アキュラ】「おそらく使い廻し…そうなればいつかはどこかが破れるわね」

【エリザ】「足跡と本…この2つがあれば衛兵さん達も…」
【アキュラ】「いえ、それはだめよ」
エリザの言葉を遮るようにアキュラが言葉をかぶせると、ゆっくりと立ち上がる。
【アキュラ】「大々的に集めたこの大所帯…多分、犯人側の人間も混ざってるわよ」
【エリザ】「しかし…そうでしたら、初めから張り込みをしておけばよかったのでは?」
【アキュラ】「確実に本が凶器になってる確証が欲しかったの……たとえそれが遠回りでも」

アキュラは2人に立つように言うと、灯りや武器を用意しながら
【アキュラ】「私たちだけで行くわよ…隠密に、そして迅速にね」

アキュラの言葉を聞くと、2人も灯りと武器の準備をはじめる。



続く

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[9]第9話『異物』
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深夜の森の中、その女性はロープと本だけを手に森の中をふらふらと彷徨い続ける。

ちょうどいい木を見つけるとゆらゆらと木に登る。
その足取りとは真逆に、手際よくロープを木と自分の首に結び付ける。

そして彼女は木から飛び降りる…二度と地面に足がつかないと知りながら…

落下の勢いに一気に気道が締まり、首の骨も体重で砕ける…想像よりも案外楽な死に方…恐れず勢いさえつければ…

勢いよく飛び降りれば降りる程、その体は大きく、振り子のようにぶらーん、ぶらーんと揺れ動く…

陰で見ている女性にはその瞬間が実に恍惚の瞬間。
体が頂点に達し、振り子運動で帰ってくる度に、彼女の身体は快楽に包まれる。


しかし、今日はその快楽に異物が混じる。
揺れが小さくなる前に、突如現れた巨大なゴーレムにより、ロープは引きちぎられる。

【グローザ】「おいてめぇ、さっさと出て来いよ。出てこねぇなら草むらごとぶった切るぞ」
【アキュラ】「エリザ、様子は?」
【エリザ】「まだ生きてます!!再生魔法にかければ…」

2人のやり取り、そして確実に隠れている自分の方へ切っ先を向ける相手に対して、女性は両手を挙げながら、草むらから姿を現す。

【女】「目撃者に酷い言葉使い…おびえてるのよ。あんな場面に遭遇して…」
【アキュラ】「残念ながら正義を振りかざす衛兵じゃないから…どうせ首吊りでも見て股でも濡らしてんでしょ?」

それ以降、無言になる女に対し、痺れを切らしたアキュラはグローザに目で合図をする。
【アキュラ】「グローザ、あの女脱がせて確認でもさせて……それでも吐かないようなら吊るし上げて、爪からいっちゃいましょうか」
【グローザ】「おっけー…じゃぁ覚悟しろよー」

アキュラの言葉にうろたえるエリザに軽く目をやると、女は降参したように大きく息を吐き、手を下ろすと、近くの切り株へと腰を下ろす。



続く

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[10]第10話『挑発』
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【女】「わかったわ…降参。痛いのは嫌なの」
座り込んだ女にエリザは衛兵から預かった手錠を掛けようと近づくが…
【女】「でもねお嬢ちゃん?私は依頼されて本を回収してただけで、殺してもないわ……そんな私を逮捕できるかしら?」

女の言葉にエリザの足が止まり、女は少しニヤつきながら話を続ける。
【女】「それとこの事件の裏には、大貴族様も絡んでいるの……犯人を偽装してもみ消し放題♪」
【エリザ】「っ!!この女!!殺す!!」
エリザはゴーレムを生成し、女に殴りかかるように命令するが…ゴーレムはアキュラの風魔法によってバラバラになり、エリザの首元にアキュラが刀を突き付ける。
【エリザ】「2人とも!!何でですか!!こんなくず!!」
【アキュラ】「そうよ。こんなくずの挑発に乗せられる必要なんてないわ」

アキュラは女に近寄ると、女に顔をぐっと近づける。
【アキュラ】「悪いけど本はこっちで回収させてもらうわよ……それと…あんたいい死に方できないわよ」
【女】「あら、それは何十年後の話?」

女は挑発するようなにやけ顔のままアキュラを無視して立ち上がると、エリザの元へと近寄る。
【女】「じゃあね。可愛いお嬢さん♪」
最後の最後までエリザを挑発したまま、女は森の外へと去っていく。



【エリザ】「なんでですか……2人とも…」
グローザが首元の刀を下ろすと、へたり込もうとするエリザの首元をアキュラは無理矢理掴み立たせる。
【アキュラ】「いいのよ?暴れても。そこの死にかけを放置してまで」
アキュラはエリザに言い放つと、軽くエリザに平手打ちをすると、グローザに怪我人を運ぶように指示をする。
【アキュラ】「それに私が本当に逃がしたと思うの?…ちゃんと馬鹿にしてくれた責任は取ってもらうわよ」



続く

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[11]第11話『報復』
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翌朝/ルブル郊外


すっかり日も登り、煌々と太陽の光が照らす郊外の道を女は鼻歌でも歌い出すかのように、軽快な足取りで進んでいく。
【女】(アウトロー気取りでも…ふふふ、所詮はあんなものね)

逮捕するための証拠はあっても、罪に結びつけることは難しい。
しかし、流石に何処か身をかわす必要もあるかなんて考えていると、1人の少女にぶつかる。
少女は謝りながらも、駆け足で遠くへ去っていく。
【女】「小さな頃ってお転婆ね……あれっ…?」
急に身体が力を失い膝をついてしまう。

異物感…腹部…しっかりと刺さる包丁…
【女】「なに………これ………ぁつい……」
無様には転がらない…でも熱い血が溢れ出すにつれ、身体は力を失い次第に膝すら付けなくなる……

這い蹲る女に急に影がさす……見上げればそこにいるのは"あの時の”緑の髪のエルフ”…
【アキュラ】「苦しいかしら?」
【女】「…なんなの……これっ……たすけて…」
【アキュラ】「首でも吊れば…苦しみから解放されるんじゃない?」

そう言い残すとアキュラは、回収した本を女の前に置き、女に背を向けて立ち去っていく。



続く

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[12]第12話『口止め』
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数日後/ルブル市内/暁甘味処/ワンとエリザの部屋


上の空で甘味処の裏の和室に座るエリザの元へと、大量の金貨の詰め込まれた麻袋を持ったワンが襖を開け、入ってくる。
【ワン】「エリザ…これはあなたの報酬金でしょ?何故貰わなかったの?」
エリザは伏し目がちにゆっくりと立ち上がると。
【エリザ】「……それは報酬金ではありません……口止め料です……」

ワンはテーブルに金貨の入った麻袋を置くと。
【ワン】「知ってるわよ。便利ね権力者って…こういう事件に絡んでも揉み消せるのだから」

エリザは拳を握りながら立ち上がり、ゆっくりとワンの横を通り過ぎ外へと出よとする。
【ワン】「何処に行くのかしら?貴方が探すの?……言っておくけど揉み消されてるから衛兵には突き出せないわよ?」
【エリザ】「…………」
【ワン】「それとも貴方が直接殺すのかしら?…楽しいものね。肋骨を引き抜いて、その辺を引きずり回して、空っぽになるまで血を飲み干して…」
ワンの言葉にエリザはしばらく足を止めるが……涙目で近くの襖を派手な音を上げて蹴破る。
【ワン】「…やめなさい……そして少し頭を冷やしてきなさい」

エリザは怒りが治まらない様子で、ワンに言われた通りに頭を冷やすためか、急ぎ足て外へと出ていく。

【ワン】(本当はものすごく嫌だけれども…まぁあの子のためね)
ワンはテーブルの前に座ると、ペンを手に取り、断に向けての手紙を書き始める。



続く

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[13]第13話『解決』
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翌々日/黒服団詰所内/ルリカの執務室


【断】「ルリカよ。グローザとアキュラが戻って来たそうじゃの」
【ルリカ】「戻ってきたのは断さんが出かけてる間ですがねー」

ルリカはお茶とコーヒーを用意すると、断は椅子に座りお茶を受取ると、静かに飲み始める。
【ルリカ】「事件自体は関係者と思われる変死体が見つかったそうです」

断は茶器をテーブルに置くと、煙管に火をつけながら…
【断】「よく言う…刺したのはお主であろうに」
【ルリカ】「……断さんこそ、昨日に見つかった貴族の死体…何か知ってるんじゃないですか?」
【断】「さぁの…しかし、その屋敷から首吊りしたと思われる遺体が複数体見つかったのであろう?死んで当然じゃの」

しばらく無言で資料を整理するルリカに、断は煙を燻らせると、ゆっくりと口を開く。
【断】「人に解決を任せておいて、こっそりとサポートを送り込んだり、自ら締めるとは…お主も心配性よの」

ルリカは資料を纏めると、横に置いたコーヒーを一口飲むと…
【ルリカ】「私が頼んだのは"解決"ではなく"調査"…ですからねー」



〜〜〜首吊りの森・完〜〜〜

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