【怪奇譚L】『悪食』





黒服団が出会う奇妙な事件や、伝承にまつわる事件。

ダネルの招待から始まる、豪華なディナー。

さて、それは普通のディナーか…それとも……

ルリカ

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[1]第1話『レストラン』
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夜/ルブル市内/会員制レストランの個室


【アキュラ】「意外だわ…」
【グローザ】「それは同感だー…」

ほんの少し前の話…
今日の夕飯を食べるのに街を散策していたアキュラとグローザがたまたま出会ったダネル…
そしてダネルに誘われるがままにやってきたレストランだが…
【グローザ】「アキュ…あたしこんな高そうな店くんの初めてなんだけど…」
【アキュラ】「私だって来たことないわよ」

周囲を見渡せば、大きなテーブル、テーブルに置かれた燭台、椅子やら壁にかかる絵画…手元に置かれたナイフやフォークまで、いかにも高級品ですといったものばかり。
【ダネル】「2人とも〜?キョロキョロしないで〜何か〜飲んだら〜?」
ダネルに言われるがままに、ボーイの置いていった飲み物に目を落とすが…
明らかに高そうなラベルの張られたワインにウイスキー、紅茶……果ては水までも、一切の濁りもなくよく冷えている。
【アキュラ】「アンタ…いっつもこんなところ来てるわけ?」
【ダネル】「たま〜にだよ〜。たま〜に…」

緊張しながらも飲み物に手を伸ばすアキュラとグローザを他所に、食べ物を楽しみにウキウキ気分で足を動かすダネル…
3人の元へとボーイが1品目のサラダを運んでくると、珍しく緊張するアキュラとグローザ、そしていつもと変わらぬダネルという珍しい夕食が始まる。



続く

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[2]第2話『悪食』
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食もお酒も進めば次第に緊張はほぐれる…それはアキュラやグローザも例外ではない…

【ボーイ】「失礼いたします」
ノックの音と共にボーイが部屋に入ってくると…
【ボーイ】「お次は肉料理になりますが、ご希望のお肉をお聞きいたします」
【グローザ】「希望の肉ねー・・・」
グローザが少し考えていると、アキュラがスプーンを置き、ナプキンで口元を拭くと静かに口を開く。
【アキュラ】「鴨があるなら貰おうかしら」
【グローザ】「鴨かー。あたしもそれにすっかなー」
【ボーイ】「かしこまりました。ダネル様は”いつもの”でよろしいですか?」

ボーイがアキュラとグローザの注文を聞き終えると、ダネルの方に向き直りオーダーを訊ねる。
”いつもの”という言葉にアキュラとグローザは毎度頼むものがあるのだろうと特に気にはしなかったが…
【ダネル】「う〜んとね〜”部位”の指定はいい〜?」
【ボーイ】「はい、一通りの物は入ってきておりますので…」
【ダネル】「じゃあね〜太ももを〜……成人前の女ので〜」

2人はダネルの言葉に驚きを隠せず、つい顔を見合わせる。



続く

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[3]第3話『ダネル』
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美味しそうな鴨のローストがグローザとアキュラの前へと運び込まれてしばらく経つが、どうにも食が進まない。
目の前のダネルは、一見、何の肉かわからない、美味しそうに調理された肉を黙々と口へと運ぶが…
ダネルの注文が2人の耳から離れず、ちょくちょくと自分の太ももに目線を落としたり、手で撫でたり…自然にそんなことをしてしまう。

【グローザ】「なぁ…なあ……その肉って…」
我慢できなくなったのか、言葉に詰まりながらもグローザがダネルに質問すると、ダネルはフォークとナイフを置き、口元を拭き始める。
【ダネル】「13歳の〜少女の肉〜らしいよ〜。食べる〜?」
【アキュラ】「ダネル…あんた一応人間よね?共食いじゃないの?それ…」
【ダネル】「共食いだね…でも、もう混ざり過ぎてわかんないね〜」
【グローザ】(うん?喋り方が………)

ダネルは再びフォークを手に取り最後の一片を口に運び、手を合わせると再び口を開き始める。
【ダネル】「最初はね〜”喰らった”生物が欲しがってると思ってたんだよ〜。でも、日に日にそれが欲してるのか、私が欲してるのかわからなくなってきてね…」
ダネルの口調が徐々にいつものけだるい口調からすらすらとした喋り口調に代わる…発せられる言葉と相まって、グローザとアキュラは形容しがたい恐怖にも似た感覚に襲われるが、ダネルは構わず続ける。
【ダネル】「ねぇどっちだと思う?私かな?中の生物かな?まぁどっちだとしても止められないけどね。だってさ食べたいし、食べないとどうしようもなく不安になるかもしれないし、もしかしたら…」
【アキュラ】「ダネル、ストップよ」
訳の分からない感覚に不安を覚えたのか、アキュラは一歩踏み出すように、ダネルの言葉を遮ると、ワインを一口飲み…
【アキュラ】「…いいんじゃないかしら?食べたいなら自由に食べれば…私はこの鴨を美味しく頂くから」

アキュラの言葉にダネルはしばらく静止すると、いつものようなボヤんとした顔に戻り。
【ダネル】「だよね〜。じゃあ〜おかわり〜貰うけど〜2人はいる〜?」

何とも表現しがたい夕食はもう少し続く……



〜〜〜悪食・完〜〜〜

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