軌道拾星



長く尾を引くアクアブルー。
幻想の雲間を航るホウキ星。


巣平 棚丸

マリ・イレイザ



少しずつ、綴っていきたいと思います。


巣平 棚丸
emoji[clock]2016/07/09 03:09
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[5]巣平 棚丸
emoji[clock]08/06 01:06
初めて見るソレは、とても幻想的で美しかった。

品の良いブラウスのフレンチカフスに、何かの宝石を思わせる紅い釦が三つ行儀良く並んでいる。
その右腕が掲げられ、華奢な指が鳴らされた時、約十の星が、輝く星が指先から飛び出したのだ。

ベッドの縁に座り直そうとしていた俺の丁度目の前で、ピンポン玉サイズの星々が、軽やかに自転しながら透き通るような青白い光を放っている。
バラバラに降り、まるで星座のように結び合う。

それぞれの点と点が伸びて繋がり、その中の空間を暗色の霞が漂ったかと思うと、触り心地の良さそうな滑らかな革張りの背凭れと座面が現れた。
輝きが緩やかに終息する頃出来上がっていたのは、深みのある青の木組みがツヤやかで繊細なディテールの、例えるならば夜空に似た瀟洒な椅子。

ほんの瞬間の出来事をどれ程長く感じただろう。

「……魔法を見たのは、初めてか?」
事も無げという表現がぴったりといった様子のマリさんの問い掛けで漸く思考が追い付いて来る。

言うまでもなく中途半端な体勢で固まっていた俺は、ワンテンポ遅れた後大きく頷き返していた。


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[4]巣平 棚丸
emoji[clock]07/24 02:13
彼女の名は、マリ・イレイザ。
この家で薬屋を営んでいるという。

外国人、いや、流暢な話し方だし、ハーフ……?
その髪色も、容姿にアンバランスな言葉遣いも、ついでに思えば屋内で靴を履く事も然りと、失礼ながらも勝手に考え、勝手に納得へ至っていた。

「俺は……巣平、巣平棚丸っていいます」
「スヒラ君ね、うん、分かった」
「ええと、イレイザさん」
「マリでいいよ」
「あ、はい……マリさん、あの何て言うか……あっ、立ち話させてすみません、俺だけ座って……」

頭に浮かぶ数多の疑問符、未だ布団に半身を委ねたままで居た呑気な様が、焦りに拍車を掛ける。
そんな俺にマリさんは先ずキョトンとした表情を見せた後、直ぐに優しい微笑みを向けてくれた。

「ありがとう、心配には及ばない」

我が目を疑ったのは、そう言われた刹那だった。
先程の思案もおよそ見当外れだったのだと知る。

何故なら思いも寄らない出来事が、簡単にそしてごく自然に、“この世界”では、起こるのだから。


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[3]巣平 棚丸
emoji[clock]07/15 05:56
「ん……どうした? どこか具合の悪い所が?」
半ば興味深げに問われる俺は、余程、可笑しな表情をしていたのだと思う。

出来る限り気を引き締め、慌てて首を横に振る。

「そう? 良かった」とベッド近くに屈み、女性は小脇に抱えた幾つかの、色鮮やかな箱を置く。
封を解き中身を確認する様子を、暫し見ていた。

年齢は俺よりも、幾らか年上という所だろうか。
ただ、何より印象的だったのは、正に月光の色が溶け込んだ、白に近い綺麗な銀色の髪。
所謂おさげのその髪は、左右の耳元から比較的緩く編み込まれ、胸の下へと垂らされている。

対照的な黒の瞳、鼻筋の通った美しい顔に、銀縁のやや大きな丸眼鏡が穏やかな雰囲気を添える。

長袖部分がレース調の黒いブラウス、ワイン色の膝丈ハイウエストスカート、共に黒系のストッキングとヒール、スレンダーな体型がより映え……

作業を終え立ち上がる女性、我に返り姿勢を正す俺。

淡桃の唇が開く。「さあ、自己紹介といこうか」


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[2]巣平 棚丸
emoji[clock]07/12 02:57
開いたドアの外側から、まだ見ぬ客人の噂話を囁き交わすような、深く連なり合う木々の葉擦れが聞こえてくる。

壁際に置かれたベッドと対する場所に位置した、光に包まれる部屋の入口に佇みその人が言う。
「目が覚めたみたいだね」

涼やかで、且つ落ち着きのある、それでいて凛と澄んだ綺麗な声だと思った。
月明かりを背にした細身のシルエット、揺れるスカートの裾端、家主であろうこの人物は女性なのだと感じることができた。

「嗚呼そのままで居てくれ。今、電気を点けるから」
慌てて動こうとする俺を言葉で制し、ドアを閉めながら女性はすぐ横のスイッチに手を伸ばす。

幾度かの明滅の後、全貌を現したこの部屋が、角が無く、円を成しているのは少し意外だった。
白い壁が明るい、程良い広さの円柱型の部屋。

しかし室内に目を配るのもそこそこに、こちらへと歩み近付く女性の姿に気が付けば視線を奪われていて、俄かに緊張した俺は自分がどんな表情をしているのかさえ、考えを巡らせる余裕もない。


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[1]巣平 棚丸
emoji[clock]07/10 01:28
ネイビー色に塗られた木目の天井、幾重にもぶら下がった金属製の星のモビール。
どこからか流れる柔らかな夜風に乗り、金や銀の星々が煌めきながら揺れている。

まるで長く穏やかな夢から覚めたように、心は不思議と落ち着いていて、頭の奥がぼんやりと霞む感覚を除けば、寝覚めは割と悪くない。

仰向けの姿勢からゆっくりと上体を起こした。

ベッド脇に立つ素朴なフロアライトの、その仄かな灯りは周辺のみを映し出し、闇に紛れる部屋の様子を全て窺い知ることは出来なかった。

「ここは……?」
独り言ちて零れた声は、小さく掠れ、耳に届く。

身体に掛かる、小花が控えめに散りばめられた淡い空色の布団に視線を落としていた時、不意に静寂を割いて、撓み軋むような物音が響いた。

階段を一段一段、確かにこちらへ近付く足音だ。

程なくして、ドアの開く音と共に部屋の中へ流れ込んだのは、草木の匂いと月の光。
白銀に照らされ、俺は思わず目を細めていた。


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