熊本で17人心肺停止、1人重体、7人不明　5日も雨の予想　引き続き要警戒

毎日新聞
九州南部に停滞した梅雨前線の影響で熊本県と鹿児島県は4日、記録的な大雨に見舞われた。気象庁は両県では初めてとなる大雨特別警報を一時出した。熊本県内では土砂崩れや球磨（くま）川など河川の氾濫が相次ぎ、県などによると、球磨村の特別養護老人ホームが浸水して入所者ら14人が心肺停止となるなど、計17人が心肺停止となっている。この他1人が重体、7人が行方不明、2人が安否不明となっている。また、芦北（あしきた）町は佐敷地区の80代女性の死亡が確認されたと発表した。

　熊本県内では、災害の危険度を示す警戒レベルで最も高い「レベル5」に当たる「災害発生情報」が、芦北町など4自治体で発令された。また、熊本・鹿児島両県内では一時、約20万人に避難指示が出された。

　熊本県によると、球磨川の支流近くにある球磨村渡の特別養護老人ホーム「千寿園」が浸水。14人が心肺停止になり、別に3人が低体温症という。「千寿園」はショートステイなども含めて定員70人。第10管区海上保安本部によると、少なくとも54人が救助を待っているのを確認した。陸上自衛隊が救助や捜索に当たっている。

　芦北町田川地区では土砂崩れで民家が流失して3人の行方が分からなくなり、消防によると、2人が心肺停止で見つかった。同町の女島地区などでも3人が行方不明となっている。

　津奈木（つなぎ）町福浜では土砂崩れに巻き込まれた1人が心肺停止となり、2人が行方不明。球磨川の氾濫で市街地が広範囲にわたって浸水した人吉市では3人の行方や安否が不明となっている。

　土砂崩れや河川氾濫による道路の寸断で住民の孤立も相次ぎ、住宅の屋根に上って救助を待つ人も出た。球磨川沿いの八代（やつしろ）市坂本町では一時、住民40人が孤立し、陸自などのヘリコプターが救助に当たった。山間部の五木（いつき）村でも96世帯182人、相良（さがら）村でも20地区が一時孤立した。

　国土交通省によると、県南部を流れる球磨川は11カ所が越水により氾濫し、堤防1カ所が決壊した。球磨村渡付近では4日午前5時20分ごろ、水位が11・11メートル（氾濫危険水位8・7メートル）に達した。

　気象庁によると、芦北町など各地で1時間に100ミリを超える雨量（レーダー解析）を観測。熊本県内では4日未明から朝にかけて6回の「記録的短時間大雨情報」が出された。4日朝までに観測された1時間降水量は、天草市で98ミリ、球磨村で83・5ミリと観測史上最大となった。4日朝までの3時間降水量は、天草市で205・5ミリ、芦北町で190・5ミリ、山江村で186ミリを記録し、いずれも観測史上最大だった。

　九州南部の5日午後6時までの24時間に予想される雨量は、多いところで200ミリとなっており、気象庁は引き続き土砂災害や河川の増水、氾濫への厳重な警戒を呼びかけている。【城島勇人、栗栖由喜、飯田憲】