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J北の巨人兵 北の大国− 聖王国パルナがある大陸の北東方面全域を占めるこの国は、冬には国土の殆どを雪と氷に覆われる。その過酷な気候風土にも関わらず様々な民族がこの地を愛し、日々の営みを続けているのは何故か。その理由の一つに、神有地の存在があるだろう。 古の巨人兵、ここには神の先兵として活躍した一族が住む神有地がある。人々は神の時代を生きた巨人一族と友好を結び、彼らと共にこの地で生きる事に誇りを持っているのだ。 ドガッッッ! 神有地内、鍛錬場に一人の若き巨人兵がいた。この一族と同じく神の時代から生きる巨大な大樹に神気を纏った拳で風穴を開ける。 「流石だな。大樹の修験法、もう七つめか?」 巨人兵に声をかけたのは術士であるが、それにしては体格が良い。まるで巨漢の武闘家である。 「ゾルゲイか?なんの用だ?例のくだらん大会の事だったら」ひゅうぅぅっと呼吸を整えながら巨人兵は続けた。「俺は出ん!ふざけるのも大概にしろ」 「わかっているよ。私も大変遺憾だ。我らは祖国を守るためにのみ存在しているのだからな」ゾルゲイと呼ばれた術士は若き巨人に頷いて応えた。 「それでもお前が来たと言うことは、何か事態が変わったのか?」吸水性に優れた素材で作られた巨大な布で汗を拭いながら巨人はゾルゲイに鋭い視線を向けた。 「一つは大会参加が協議会で確定した事だ」 「馬鹿な!」大声、それを予測していたゾルゲイは早いタイミングで耳を守った。巨人の大声を間近で聞いたら下手すれば鼓膜がやられる。 「何かがおかしいというのには私も同意だ」 協議会とは国家意思を確定する議会のようなものだ。これには巨人族の長老達も参加している。神有地を守るため、共存する人間族を守るため以外には対外的な戦闘行為をしないのが巨人族の基本姿勢である。なのに協議会は闘技大会の意味合いの強い召喚術士技量競技大会への参加を決定したのだ。 「外交的に我らが祖国の強さを示さなければならないというのが基本方針だそうだ。魔族戦争以来、各国が召喚・契約術による軍事強化を行っているからな」 「ふん。魔族戦争に災厄戦か」 「そうだ。魔族戦争で遅れを取った事、そして災厄戦の戦果について協議会は問題視していたからな。今回の大会で汚名をそそぎたいらしい」 魔族戦争勃発当初、北の大国は巨人族の力の要である神気を封じられた事で劣勢を強いられた。天妖の魔王を撃退した聖王国パルナの援助によって辛くも勝利した北の大陸は反省をふまえて軍備を強化していった。 ところが三十年余年後に勃発した災厄戦において、パルナへ送った援軍が魔界において目立った戦果を上げられなかったのだ。 「魔族戦争については爺様達の失態だ。敵は俺達を研究していたのに、こっちは神の先兵であった歴史に胡座をかいていたのだからな。だが災厄戦は…」 「ああ、私達も学ぶ事が多かったな。サイアよ」 召喚術士ゾルゲイと若き巨人族のザ・サイアは災厄戦に参加していたのだった。初めての遠征、そして魔界での戦いは北の大国の次代を担う二人に多くの試練を与えた。 「…うまいな。ゾルゲイ。今回の大会も学ぶ事が多いから出てみないかと言うのだな?」 苦労を共にした戦友を恨みがましい目で見つめるサイア。 「そんな目で見るなよ。どうせ出なくてはならないなら、その価値がわかるメンバーで挑みたいのだ。私はな」肩をすくめてみせる巨漢の召喚術士は、今度は思い出したように笑うと誘いの文句を一つ付け加えた。 「そうそう、二つ目の変わった事態…だがな。諜報部の得た最新の情報によるとだ。召喚術士Kも出てくるらしいのだ」 バンッ!! ゾルゲイの持ち込んだ情報を聞くや手を叩くサイア。その音で大樹の葉が何枚か散っていく。 「なんでそれを先に言わん!そうか…あいつが出るのか」 先程までのつまらなそうな仏頂面から一転、広角を上げて壮大な笑みを浮かべるサイアは膝をついてゾルゲイに顔を寄せる。 「ゾルゲイよ。お前の事だ。もうメンバーの選出は済んでいるのだろう?楽しめそうか?」 「ああ、災厄戦でも活躍した者達から厳選している。祖国を愛する気持ちと日々の鍛錬を忘れない奴らだ」 「そうか、なら良い。俺もエントリーしよう」 そう言って立ち上がったサイアは再び大樹へと向き直る。 「了解した。協議会へは私から伝えておく。…無理はするなよ」既に心を大会へ向けた戦友の背中にゾルゲイは話しかけながら、大会へ向けて更なる強さを求める若き巨人の気迫を感じていた。 「K… あの時の約束を果たす時が来たようだな!楽しみにしていろよ」 キンッ− 収束された神気を拳に纏う。大樹を貫く音が変わった。北の猛者達が大会へ向けて牙を剥く。その熱さで凍土を溶かすように。
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