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K東の双龍姫 東の大国− 聖王国パルナにある東の銀竜公領より隣接する国であるが、国境には天まで届くような山脈群があるため、国交は唯一の平野部である南東方面だけである。北には北の大国と隣接するも、ここも山脈群に囲まれているため古代より隣接国との戦争は避けられている。 その代わりに多かったのが、国内における勢力紛争だった。多数の小国家群による権力争いもあったが、これらがまとまった大国家同士の争いは最早紛争のレベルではなく、諸外国から見たら国家間の戦争と相違ない規模の破壊が繰り広げられていたのである。 そしてこの国にも神有地があった。天まで連なる山脈に住むのは神竜族の末裔達である。他にも諸外国には見られない神獣や聖獣が多く住んでいる東の大国では、どの大国家が覇権を持とうとも、変わらずに神獣達を敬い、交流を持ち続けて来た。 「ねぇ、ワタシは嫌と言ったわよ。ね、イリィ?」 「ええ、わたしも言ったわ。ね、ファユ?」 東の大国、国防局の中に軍隊に似つかわしくない煌びやかな部屋があった。そこで不満そうに駄々をこねているのは、おそろいのワンピースを着た同じ顔の不思議な少女達である。 爬虫類様の尻尾、そして鹿のような角を持った…という形容表現では機嫌を損ねてしまうだろう。二人は誇り高き神竜族であり、今は人間態に擬態しているだけなのだから。 「困らせないで下さいよ〜 ファユ様、イリィ様。大会参加は国家大会で決まった事ですし、神竜族の長からもお二人の事を頼まれているんですから〜」 大きなソファでバフンバフンと跳ねている神竜族の少女に敬語で接するのは、赤い角を持つ気弱そうな青年である。 「ギンが出れば良いよ。ね、だってギンは強いじゃない?イリィもそう思うでしょ?」 「ええ、ギンは強いとわたしも思うよ。ファユもそう思ったのね?」 「そりゃあ僕も出ますけど〜 カロン師父からの伝令なのですから、これは聞いて頂けないと〜」 ギンと呼ばれた青年は炎駆族である。紅の麒麟、炎を纏う彼らの一族もまた東の大国の大切な神族の末裔なのだ。 ギィ− 扉が静かに開くと術士風の男が入ってきた。 「「あ!カロンだ!」」 ファユとイリィは同時に発声すると、カロンと呼んだ術士に突貫していった。 バタン!ゴロゴロゴロ〜 倒された勢いで床を転がる術士と少女。 「こらこら、全く君達はお転婆でいけないな」 窘めていながら、術士は笑顔のままである。 「だってー カロンがあまり遊んでくれないからー ねぇイリィ?」 「そうそうー カロンがあまり遊んでくれないからよね。ねぇファユ?」 「普段はそれでも良いけどね。お仕事の時は師父と呼びなさい」そう言いながら二人を立たせて、服を整えて、席に着かせるカロン。 「「はーい、師父カロン」」 いったん抱きついた事で安心したのか素直に良い姿勢で返事をする二人であった。 「ギンもご苦労だったね」 「いえ、お二人のお世話も僕の仕事の一つですから」 カロンの労いに笑顔で応える青年は、スッと少女達の後ろに控えるのも忘れていない。 「さて、今回のお仕事ですが…」 「カロン師父!ワタシは変な大会なんて出るの嫌です!ね、イリィ?」 「師父カロン!わたしも変な大会なんて出たくないです!ね、ファユ?」 少しだけ言いようが真面目であるが、根本的に拒否の姿勢は変わらないようだ。 「そうか、それは困ったな。勿論、君達の代わりを長に相談しても良いのだが…」 「そうそう!長に相談するのが良いよ!ね、イリィ?」 「そうそう!長に相談するのが良いよ!ね、ファユ?」 笑顔で代理を立てるように促す少女達に、カロンはクルッと背を向けると、 「わかった。長に相談する事にしよう。とても残念だ。君達が喜ぶと思ったんだがなぁ…」 「「??」」思いがけない言葉に戸惑う二人。 「いやね、今大会に召喚術士K殿が参加するらしいと報告があったのだよ。君達は会いたがっていただろう?」 わざとらしいガッカリ顔で情報を小出しにするのはファユとイリィの思考を読み切っているからだろう。 「え!Kが出るの?」 「うそ!聞いてない!」 二人の口調がズレた。その動揺をさらに揺さぶるようにカロンは話を続ける。 「ああ、最新情報だ。今までのは大会の要項だけだったからね。いやあ残念だ。君達が強く!可愛く!成長した姿をK殿に見せる事が出来たのになぁ〜」 「うう、カロンずるいー」 「そうだよー、ずるいー」 「あ、これは言わない方が良いかな」わざとらしく動作を止めるカロン。 「「????」」戸惑いパートU 「いや…言わない方が良いなぁ…」二人をチラ見して、逃げるような素振りを見せる。わざと。すると… ガシッ ガシッ− 反射的にカロンを捕らえた二人は我慢できずに問う事になる。 「なにを隠してるの?カロン」 「話さないと何するか分からないよ?ワタシ達」 Kに関する情報の何かだと察した二人は、凄まじい目力でカロンを射貫いた。 「わ、わかった。言うよ。だから離しておくれ」 観念したカロンを先程のソファに座らせて、ファユとイリィはその前に立って見下ろす。カロンを逃がさないためだ。 「実はね。会場の警備をパルナの四大公がする事になったようなんだ」 「「!!!」」二人の目が大きく見開いた。 「当然、銀竜公も来るんだよ。となると?」二人の興味を引き出すように情報を小出しにしていくカロン。 「まさか… あの女も来るの?」 「最悪な女… あいつが来るの?」 二人の容姿に変化が生じていく。髪が逆立ち、伸びた尻尾がビシッと床を叩く。 「まだ報告はない。だがね、K殿が参加する情報は銀竜公にも入っている。当然、同盟を結んでいる魔龍郷の姫達にも情報が伝わると私は思うのだが。君達はどう…思うかね?」 目を光らせて自分を見下ろす少女達に挑戦的な問いをする術士は、その回答も想定済みであろう。 「…来るね。あいつ…」 「ええ、来るわ…」 翼も隠しきれない程の感情を表した二人は考えをまとめたようだ。 「さて、どうする?長に頼んで他の神竜族をお借りした方が良いかい?それとも?」 ファイナルアンサー。もっとも答えは確定している。 「出るわ。カロン師父。あの女に目に物をみせてやる!ねぇイリィ?」 「出るわ。師父カロン。あの女にも今の私達をみせなくてはね!ねぇファユ?」 決意するやいなや冷静さを取り戻した二人は、カロンの手を取った。 「感謝するよ。これから勝利のための功夫をもっとしなくてはならない。準備しておきなさい」 「「「はい!」」」 神竜族の少女達に加えて、この三人の駆け引きに圧倒されていたギンも決意を胸に返事をした。 今ここに元神獣使いのカロンが率いる東の大国の精鋭チームが大会制覇に向けて爪を研ぎ始めたのである。
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