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L黒の聖石術士 黒の大陸− 険しい山脈群で囲まれており渡航する者も少ないこの大陸は、実に千年もの長きにわたって黒き王の支配下にあった。帝王墜つ、ほんの数ヶ月前に黒の大陸で歴史的な事件が起こった。黒き王の崩御によって、大陸の勢力図は新たに描かれ直される事になる。 クリスタルパレスにおいて、かつての白き王国の復興が始まっていた。千年という時間は果てしなく長く、かつては白き王国に属していた一族も何代も前から黒き王の支配下に置かれていた。黒き王が倒れた後は、大陸を離れる者もいたし、同種族の国へ流れる者もいた。 召喚術士ブッコ・シュサンの家系は古代白き王国をルーツに持つ。黒き王の元では魔石将とは異なり軍部の所属であった彼は、黒き王の最後の戦いを知らない。主をなくした後は、長き封印が解かれたクリスタルパレスに導かれ、白き王女に仕える事になった。 「さて… どこまでやれるだろうか」 褐色に焼けた肌とは対極の白い法衣を纏っているブッコはテーブルの上に置かれた聖石を撫でながら呟いた。 「俺の場合、厳密に言ったら召喚術ではないのだからなぁ」 召喚術の基本定義は魔界などの異世界からの魔物の転送術である。強力な魔物と契約して使役する。これを主として行うのが召喚術士なのだ。 聖石獣使い− いや聖石術士というのが彼の正式な職業(クラス)である。これは魔石の力を身に纏って戦闘に特化した魔石将とは異なり、聖石に光の精霊神の眷属たる聖獣を宿らせて顕現させて戦わせる術式である。 「黒王様は誰よりも強く、大陸外へも武力を持って覇道を歩もうとされた。だが白き王女は、聖石の反射光のように多種多様な性質を持つ種族達と共に歩みながら、世界への道を示そうとされている」 クリスタルパレスにも普通の召喚術士はいる。元々魔界へのルートが出来やすい黒の大陸である。ある意味では強力な召喚・契約術を行使出来るのだ。しかし王女はこれを快しとしなかった。 「我々が歩んでいく道を諸外国の方に知ってもらう。そのためには貴方の聖石術が良いと考えました。勿論主催者には問い合わせ済みです」 王女はそう言ってブッコに秘蔵の大聖石まで授けたのである。 「光の精霊神に選ばれし英霊までも宿す事が出来ると言われている大聖石まで賜ってしまったら、負けるわけにはいかないではないか!」 ブッコはやる気に燃えている!しかし同時に諸外国での戦闘経験が無い事にネガティブにもなっていたのだ。 「では手合わせしてやろう♪」 黒き王の下で軍団長を務めていて、今はクリスタルパレスに再雇用されている知己が、配下の召喚術士達との模擬戦闘の機会を作ってくれた。 「嘘…だろう」 知己が震える声を絞り出した。 黒き王の居城近くにある訓練場を使っての模擬戦の後の事である。 「なんでこれで主戦力じゃなかったんだ!?」 呻いているのは配下の召喚術士達。 訓練場で倒れているのは、ロックトロールやメタルドラゴン、アイルダーなどの訓練された強力な召喚魔物達である。そしてそれらを見下ろしている宝石のような外骨格を持つ魔物が三体いた。 「アサセ・コクロ、ビリウ・ウブル、カグン・ヘイム。ご苦労だったね。戻りなさい」 アサセ・コクロは蜘蛛のような体躯を持っており、ビリウ・ウブルは一本足一本腕の人型である。カグン・ヘイムと呼ばれたのは鳥のようであり、ブッコの呼びかけに応えると一声鳴いてから聖石に戻ってみせた。 「ありがとう。これで諸外国でもなんとかなりそうだと思えるようになったよ」 懐っこい笑顔で知己に話しかけるブッコは本心からそう思っていた。嫌みなどではなく。「ああ、がんばってきてくれ。我らがクリスタルパレスの未来のために…な」 精鋭の軍用魔物を一蹴された知己に笑顔はなかったが、応援する言葉に嘘はなかった。 「あ、すまないが、あと二匹の力も試したい!手伝ってくれるか?」 「な… わ、わかった。わかったから…ちょっと待っていてくれないか」 聖石獣の実力を軍用魔物との模擬戦で確認できたブッコの喜びは大きかったが、主戦力の軍用魔物を一蹴されてしまった知己の悲しみも大きかった。 黒き王配下の軍用魔物さえも凌駕する聖石獣。これを従える若き聖石術士が大陸の新たな姿を示すために大会に挑むのであった。
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