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N魔術師ギルドの精鋭達 ウツロイシティ・大会運営本部− ウツロイシティは、魔傀の魔爵が起こした遊戯という名の事件以来、聖騎士の鍛錬場として完全復活を遂げていた。今大会はコロシアムを中心に、魔物が存分に力を発揮できるように鍛錬場をフル活用して行われる事になっていた。 国家外交レベルの大会になったとはいっても、実際の準備は魔術師ギルドが行う。今回は本部と全ての支部に所属する全ての会員に招集がかかっていた。 「…といっても、大体は俺達がやる事になるんだよなぁ…」 休憩室でため息をつくのはヒョロっとした長身に眼鏡という風貌の魔術師…いやここでは全員が魔術師であるか…である。 「サボらないでねー、ウチらがやるしかないっしょ?」 なだめるて発破をかけるのは、こちらは魔術師には似つかわしくない作業着で奔走している褐色肌の女性だった。 「Qは見た目によらず真面目だねぇ。そういやJとZは何処にいったんだ?」 ヒョロは召喚術士G、仮名をガイという。 「イニシャルトークはわかんねぇから、名前で呼んでって言ったっしょ」 「わかったよ、クィーンクィーン…って言いにくいんだけど」 「クィンで良いよ。地元ではそう呼ばれてるし」 褐色の女性もまた召喚術士Q、即ち大会参加者である。 「てか、なんで本戦参加の僕達が会場の設営とかしなくちゃいけないわけ?どうせなら大会に向けての訓練とかさせたいんだけどなぁ」 不満顔のGにQは指でツンツンと突きながら、 「そんなん今更やったって変わんないっしょ?むしろこうして体を動かしていた方が気が晴れるし」 Qの爛漫な笑顔に見惚れるG。しかし色恋沙汰とは無縁な嵐がやってきた。 「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ くそーーーーーーーーーーーーーっ ぜってぇコロスーーーーーーーーーーーーーーーーっ」 暗がりの森から帰還した召喚術士Jこと、ジャスティである。 「うるせえし!サボった罰としてコロシアムの整地と予選会の魔霧の草原の偵察してこい」 とびきりの笑顔のままJの胸ぐらを掴むQ。 Qは長身、Jは少年ゆえの標準的な背丈、ゆえに胸ぐらを掴まれると、同時に持ち上げられる事になる。 「なんで俺が!?今ムシャクシャしてんだよ!ガルルルルッ」 逆ギレして唸るジャスティであるが、確かに結構な時間を設営から離れていたわけだし、かなり分が悪かった。 「だったら一緒にやろうか、じゃじゃじゃジャスティ君…」 気にしていないと聞こえないくらいの小さな声は休憩室の入口からした。 「声小せえし。Z…えっとゼルだったよね。聖教支部の。ゼルもサボりだからジャスティと一緒で良いかな」 「うん… あ、これチェックしておいて…ね。じゃ…ジャスティ君、いこ?」 「ん… え!これって、備品のチェックと警備のスケジュール表と… その他もろもろ出来てんじゃん!これゼルが一人で作ったの?」 召喚術士Z、仮名をゼルというが、彼はこういうデスクワークが得意であった。小柄な彼は全身がほぼ魔法衣に隠れていて、ほぼ顔が見えない。でも声の感じからかなり照れているのが伝わってくる。 「うん… 誰もいない部屋で楽だったから」 「あんたって出来る奴?仕事してたんならジャスティに付き合わなくても良いと思うけど?」 「いや… 僕の魔物は整地とか得意だから… じゃじゃじゃじゃすすす…」 「じゃじゃじゃじゃ、じゃじゃじゃじゃ、うるせぇ!」 まだクィンに胸ぐらを掴まれて、ぷらーん状態でいるため迫力にかけるジャスティの反論。 「ごめん…よ。いこ?じゃ…すてぃ君」 「ハハハ、あんた良い奴だね。それにしてもガリ勉がトレードマークの魔術師達が準備室に殆どいないって…こりゃヤバい組織に入っちゃったかなぁ…。ま、いいや。ほら!ゼル。ジャスティをあげるから監督してやって」 ポイッとゼルに差し出されたジャスティの腕をゼルがギュッと掴む。 「おい!俺を物みたいに扱うんじゃ… うわっ おっ なんて馬鹿力だ… こら!ゼル引っ張るなっ おい… ぜ… こら… … …… ………」 ゼルに引きずられるジャスティの抗議の声は数分で聞こえなくなったという。 「ねぇ、ガイ?アンタは合成魔術の論文書いてたよね?やっぱりそっち系が得意?」 「ん?偵察か?…って論文出してたら秘匿情報とかないよなぁ…。ある意味、今回の大会で情報が一番オープンなのって俺らだよなぁ…」 クィンの質問にため息をつきながらガイは肯定した。 「そうそう。私は魔具師だったからね。それで大体わかるっしょ」 「ゼルは死霊術士だったから…アレを使役しているんだろうしな」 「ん?ゼルは整地とかをアンデッド使ってやってるから、一番最初にネタが割れてたよ」 話に花が咲くガイとクィン。 「そういやジャスティは?あいつの事はよく知らないな」 「魔術師ギルドに入ったのが三年前だったはずよ。確かロロス先生の秘蔵っ子って噂されてたよね。私の支部でも有名な子だったわ」 「ロロス先生の愛弟子かぁ… こりゃ完全なダークホースだな」 ジャスティの成長にはKも驚いていた。そしてロロスも召喚魔物の全容を知らないと言う。ガイやクィンの想像以上にジャスティは謎に包まれてる。 「どこかの貴族のご子息様とかかしらね」 「え、ガルルルって唸る貴族がいるか?まぁ…魔術師になるには金がかかるからな。冒険者でガンガン稼げている奴か貴族以外じゃなりにくいけどな」 かくいうガイは親が冒険者だった口である。そしてクィンは、 「人は見た目じゃないし、こうみえてウチはお嬢様だからね」 「え」 「想像通りの反応、ウケるし」 戸惑うガイを大きく口を開いて笑うクィンの家はパルナが誇る魔導公の分家であった。本当に貴族の令嬢なのである。 由緒ある家に生まれ魔術の高等学力を身につけたが、発展的な性格のために家を飛び出したクィンは、ある国で造形美と機能美が見事に融合した魔具に魅せられた。それ以来、魔具師となって日々研鑽に励んでいたのだ。召喚術は魔具の材料を探す過程で必要になって身につけた。 対してガイは順当に冒険者として実地の魔術を学び、今は合成魔術に魅せられて論文を書くほどに熱心に研究している。彼に取って召喚術は合成魔術の実践のひとつなのだ。 合成魔術に長けた召喚術士ガイ、高度な魔具を造形する召喚術士クィーンクィーン、アンデッドを使役する寡黙な召喚術士ゼル、そして… Kの友達の上位種を召喚する実力を短期間で身につけた召喚術士ジャスティ。魔術師ギルドと魔術学院の次代となるであろう四人の精鋭達が今、熱心に大会準備をしていた。
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