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㉓いざ予選会場へ ウツロイシティ・中央広場− 『皆さん、燃えてますかー!』 声を大きくする魔具を通して、大会実況士を名乗る女性が予選会開始の一声をあげた。 『私は今回の大会をアナウンスさせて頂くトクファ・ズィームと申します!宜しくお願い致しまーす!』 「楽しそうだけど…これじゃ運動会みたいだね」 アウルムの母ヒュルムが造ったという魔導スクリーンに映し出されているのは、実況者のトクファと魔術師ギルド長のロロスである。 『では早速、大会主催である魔術師ギルド長L・D・ロロスさんに予選会開催のご挨拶と、競技内容を伝えて頂きましょう!』 『ええ、L・D・ロロスです。予選会参加の皆さん、こんにちは…』 まずロロスが大会開催に向けての挨拶を始めた。 「こういうのって長いんですよねー。なんか眠くなってきました」 「ルリカ…さっきまで寝てなかったっけ?」 朝ご飯にはやってきたものの、その後に二度寝をしたルリカは結局昼近くまで寝ていたのである。 『…では競技内容をお伝えします!』 挨拶で眠そうにしていたのはルリカ達だけでなかった。他の参加者と付き添いの何割かもまた眠そうにしていたのである。苦笑しながら、少し声を大きくしてロロスは競技内容を伝え始めた。 『ここウツロイシティの修練場として名高い魔霧の草原、ここより10km程の地点に皆様を転送させて頂きます。そして魔導弾による合図でスタートして頂いて、魔霧の草原へのゲートになっている東門にゴールした先着二名の方が予選突破者となります!』 おおぉ〜、歓声というよりは喚声が起こった。 魔霧の草原− かつての、いや今もウツロイシティの聖騎士修練場として難関と言われている場所である。常に立ちこめる霧によって視界は悪く、地上だけでなく空中や地中にも凶悪な魔物がいて襲ってくるのである。 「大丈夫かな。あそこは結構きつかったよね。マスター一人じゃ…」 心配するリオは、かつての戦いを思い出していた。怪我を負ったKの代わりに試練突破のオーブを得るために訪れた草原では、霧の中でも自分達を感知して襲ってくる魔物達に苦戦をしたのである。その上、魔鎧を纏った魔族にも強襲されて…。 「大丈夫ですよ。今、召喚できる魔物は無制限だってアナウンスしてましたから。適性のある魔物を召喚するんじゃないですかーもぐもぐ」 昨日より多くの食べ歩きフードを抱えながら観戦モードのルリカは楽観的にリオに語りかけたが、リオは青い顔のまま反射的に頷くだけだ。 『では付き添いや観覧の皆さんは、中央井戸を中心に描いてある魔法陣から出て下さいー。出場者の皆様はそのままでー』 どうやらこの魔法陣がスタート地点まで出場者を送る転送魔法を発動させるもののようだ。 「あ、マスター」 魔法陣を出る群衆に流されるリオは、Kの姿がみるみると小さくなっていくのに言いようのない不安を感じた。 「大丈夫ですよ」 リオに、そして皆に向かって手を振るKはうーんっと手を伸ばして大きく息を吸った。 『はい、ではこれより召喚術士技量競技大会・予選会を始めます!』 トクファのアナウンスと同時に、魔法陣を囲んでいた魔術師十二人が転送魔法の呪文を詠唱し始めた。三ラウンドして発動した大人数用の転送魔法は光を発し、三十四名の出場者を包み込んでいく。そして大きな閃光と共に三十四人は姿を消した。 ”ウィィィーン” 転送完了と同時に、広場の大型スクリーンが光を発した。 『はーい、では現地の様子を観てみましょう〜』 映し出されたのは、Kの姿だった。 「え、マスター。なんで?」 『はい、現地には撮影用のゴーレムが数体おりましてー、予選突破の有力者を中心に競技内容をこちらに投影する事になっておりますー』 「なるほど、マスニーは本来本戦シードでしたからね。というが表向きの話ですかねー」 もぐもぐを一旦止めて、ルリカが目を細めた。 「表向きって?」 「リオリオ〜?またがっかりさせるとヤルっていったじゃないですかー?」 ハッと我が身を守るリオは、セコムンの背後に隠れた。 「あれだろ?諜報活動ってやつだよな」 「ええ、マスターがどんな戦い方をするのか、偵察をしているのです」 ティアとアウルムも険しい表情でスクリーンを見つめる。 「だったらあまり意味が無いかもしれませんね」 ビロードのような滑らかな声、それはリオの背後からした。 「アイシャさん!?いつ来たの?」 魔術師風のフードで全身を完全に隠しきったアイシャは小声で「ハロハロ〜」とリオ達に挨拶をする。 「マスターが好きなタイミングで来られるようにと、一度限りの転送玉を下さったのです。新生淫聖衣が出来たので、早めに来ることが出来ました」 淫聖衣− アイシャがエロスとも呼ぶ魔具は、前回ウツロイシティに来た時は黄金のフルアーマーであった。重戦士の特性かと思いきや銃火器類を展開する銃戦士の特性を持っており、最終局面ではガリルの"キャッスル”によって巨大具現化した。淫をいう言葉はどこへやら、まさしく最終決戦兵器だったのである。 「あのう、アイシャさん。あまり意味が無いってどういう意味です?」 リオの疑問は新生淫聖衣よりも、アイシャの言葉にあった。心配顔のリオにアイシャは微笑んでから回答した。 「そのままの意味ですよ。リオちゃん。予選会は戦闘ありのレースのようですね。本戦の闘技とは違います。それにマスターは色々と規格外の御方ですからね」 単純に契約している魔物の数にしても、契約内容にしても、魔物の鍛え方にしても、K自身の戦闘スタイルにしても、全てが普通の召喚術士の常識外にある。 「マスターを研究している人は既に災厄戦から調べているでしょうし、こんな視界の悪い場所でのレース一つで何かが変わるものではないと思いますよ」 凜として答えるアイシャの言葉にはリオだけでなくティアやアウルムも元気になっていった。
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