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㉔惨劇のスタート 『では!召喚術士技量競技大会・予選会をスタート致します!』 トクファの宣言と同時に、中央広場に設置された魔導砲が天空に向けて火球弾を打ち上げた。火球の魔法の数倍の破壊力を持つ魔導弾は、上空で炸裂すると強力な閃光と耳を劈くような爆裂音を周囲に発した。 「び…びっくりした」 「なるほど、これがスタートの合図で閃光の方向がゴールというわけですねー」 かなりの高度での炸裂したので耳がおかしくなる程の音量ではなかったが、リリーはビックリして持っていたお菓子を落としてしまい涙目になってしまった。 「はいはい、リリーさん。私のリンゴ飴をあげますから泣かないでー」 「!?リリー、リンゴ飴好きです!!」 ルリカのナイスフォローで一転して笑顔になるリリー。 「あ、みんな召喚陣を描き始めたのです!…あれ、マスターは…」 スクリーンを見ていたアウルムが驚きの声をあげた。 「あ…なんで?なんで召喚陣を描かないまま霧の中へ?」 リオが言うようにKはスタートの爆裂音が小さくなって届いたのと同時に歩み始めた。魔霧の草原の霧は魔素を多く含み、それを糧にする魔物が多く潜んでいる。魔物の護衛も無しに術士の類いがノコノコと歩いていたら、数分もしないで食い殺されてしまうだろう。その魔性の草原にKは散歩するように歩き始めたのだ。 「なっなんで魔物を召喚しないんだ!?」 Kの近くからスタートとなった召喚術士達は、Kのあり得ない行動に驚愕した。 「ば…馬鹿な奴だ。俺達に殺される前に草原の魔物に殺される気か!?」 これはKの暗殺依頼を受けた術士だろう。いずれにせよ魔物の召喚・使役には疎いようだ。彼らは一様に魔法陣から大型スクロールを取り出し、それを広げて魔物を発現させている。自身の実力では大型の魔法陣さえ描けない証、そして魔物も力尽くで弱らせてから強引に契約を結ばせてから、コントロール用の魔具などで強引に使役していた。 「どっ どこにいる?」 霧の中なのに、それを見通す特性を持つ魔物を召喚した術士は少数だった。魔物の特性を理解してシチュエーションに合わせて入れ替える事も彼らには出来ない。それ故に暗中模索の状態で、ゴールを目指したりKを探したりしている。 「あ!マスターがいたのです!」 Kを見失ってから数分して、撮影用ゴーレムがKの姿を再度捉えた。撮影用ゴーレムには蛇のように熱を感知したり、蝙蝠のように音でターゲットを捉える機能が付けられているとアウルムが語った。恐るべきは大陸中に誇るリフォールの魔法科学力である。 「え…マスターの背後に誰か居る…」 リオがそれに気がついた。斧と鉈で武装した人相が殺人鬼なオーガーと使役している術士がKを見つけたのだ! 「マスター後ろー!後ろ−!!」 ルリカが、ティアが、リオが、スクリーンに向けてKに迫る殺意の刃の存在を教えようと声をあげるが…。 ”ザクッッッッッッッッッッッ!” オーガーの無慈悲な一撃がKの頭を柘榴のように破裂させた…。 「ま…マスターーーーーーーーーーーーーーーーっ」 「え、嘘…」 「マスターが…」 「…いや…そんなはずは…」 「… ……う…そ」 悲鳴が消えゆくような静けさが広場を覆った。 リオ達だけでなく、広場で観戦していた全ての者の声が止まったのだ。 「おい…この大会、殺人ありなのかよ…」 誰かが言った。 嘘だ。マスターなら、暗殺者がいる事だってわかっていたはずだ。わかっていて立ち尽くしているなんて。そうでなくても危険な草原なのに、歩みを止めるなんて。 …マスターがそんなミスをするはずがない!! 「あっ」 リオと同じ考えだったのか、アイシャもルリカもティアもリリーもアウルムも、ド・レインの全ての者がスクリーンを見上げた時だった。異変が起こっていた。 「うわっっ なななんだ!?これはぁぁぁ」 「ぐおおおおおおおおおおっっ!?」 Kを斬殺したオーガーを、Kだったモノが絡め取っていく。裂かれた肉塊がドロドロのアメーバのように変化して、腰を抜かしていた術士も取り込んでいく。 「おい!こっちを見ろ!!あそこにKがいるぞ!!」 「なんだ?あっちにも召喚術士Kがいる?」 「おいおい、一体何人…いるんだよ」 広場の喚声の原因は斬殺された術士の話題から、無数に現れた術士の話題へと変わっていた。そのそれぞれに暗殺目的の術士と使役魔物が牙を剥き、そして取り込まれ…いや食べられていった。 「…ああいう擬態をする魔物って、あの草原にいましたっけ?」 かつて魔霧の草原を制覇したルリカが呟いた。 「わかんない…。でも、魔霧の草原の魔物でないなら…」 「そうです!これは…マスターの!」 Kは生きている!希望の光が差した。
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