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㉚立ちはだかる壁 「嘘…こっちにくる…」 青ざめている小柄な聖騎士、いや聖騎士見習いの声が震えていた。 「あ…あれってリーマさんじゃ」 ジャイアントの突進先に目を向けたリオが叫んだ。 そう、何故か薄倖の星回りが未だに抜けていないリーマに向かって、ベテラン聖騎士でも止められないだろう大型魔物の突進が迫っていく。 「終わったかな」 リーマは小さく呟いた。以前のリーマだったら、ここで頭を抱えて天に祈り始めただろう。しかしウツロイシティでの冒険と、その後のリーランドのしごきによってリーマは変わっていた。 勿論、目の前のジャイアントを吹っ飛ばす大技を会得したのではない。危険に対する立ち向かい方を実践しているのである。リーマはジャイアントの挙動に全神経を集中したのだ。 「来る…」ジャイアントの間合いに入った。ジャイアントが自分を吹き飛ばすために拳を固めて振り上げる。そして左足に重心を向けていって…。 「え?この軌道は」ジャイアントの拳の向かう軌道が自分の背丈よりもずっと高いところに設定されているのに気がつく。 ブゥン!− 人間のそれよりも遙かに大きなインパクト音。それはリーマの頭の位置よりずっと高いところからした。 「ぐ…」 見上げるとジャイアントの青年が正拳突きの姿勢のまま歯を食いしばっている。 いったい…何が? その答えもリーマの頭上からした。 「なかなか良い突きだが、この程度では俺は倒せん。諦めて縛につく方が良いぞ」 「ぐうぅ…」 リーマの視界に青年ジャイアントより一回り大きな巨人が映った。その巨人はあろう事か青年ジャイアントの体重も乗った正拳突きを片手で受け止めているのだ。青年が姿勢を戻せない事を考えると、凄まじい握力で拳を捕まえているに違いなかった。 「ほら、さっさと待避しろ。巻き添えになりたくなかったらな」 大型の巨人がリーマに忠告をする。 「は…はいっ」 巨人族の戦いに巻き込まれたら死ぬだけじゃすまない。リーマは慌てて大型の後方へ待避する。大きな雄叫びと咆哮を背中で聞きながら。 「ぐおおおっっ!!」「シャーーーーーッッ!!」 青年ジャイアントの正拳が止められた時に素早く後ろに引いていたオーガーとビーストが青年ジャイアントの左右に展開し、同時に青年より大型のジャイアントを強襲した。 「なかなか良い連携だが、足らんな」 ブゥゥン!大型が無造作に片腕をあげた。青年の拳を掴んだままで。 「うわぁぁ」青年ジャイアントの体が宙に舞う。そして大型は広刃の剣を打ち込んでくるオーガーとの間合いを一瞬で詰めると、すかさずにその両手首を掴んだ。青年ジャイアントでも振りほどけなかった握力はオーガーの両手首の骨を粉砕し、大型はそのままオーガーを、地面を蹴って首元へ迫ろうとしていたビーストに叩きつけた。 「ぎゃ…あ」「ギャンンッッ」 悲鳴がバウンドする。どんな力で叩きつけたら、石造りの地面で人の身長ほどまで跳ね返るのだろうか。 「そうら、まとめて相手をしてやろう。このエンテ・セルピのザ・サイアがな」 北の巨人兵サイアは、宙に浮いたオーガーの首とビーストの足をそれぞれ掴むと、落下してきた青年ジャイアントに向けて投げつけた。 「ぐわあぁっ」衝突は投擲のベクトルが勝り、三体は噴水まで転がっていく。 「な…なに?僕はいったい何を見せられているの!?」 サイアの強大なパワーにリオは驚愕していた。これまでにも魔爵クラスの魔力が膨大な敵を見た事はあったが、巨人族の純粋なパワーにはこれらとは全く違った凄みを感じたのである。
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