コピー
㉛エンテ・セルピ 「さて、仕上げといこうか!」 衝突のダメージでなかなか立ち上がれない三体の前に歩いてきたサイアが両の手を大きく広げた。 「レジャネーヤ・バーニャ(凍てつく暴風)」 ビュフゥゥゥウウウ!! サイアの前方のみ、倒れている三体を包み込む範囲のみで風が荒れ狂う。この術式が竜巻と異なるのは、ただの上昇気流ではなく限られた範囲のみで風を循環させるところだ。従って周囲に被害を出す事なく目的を達せられる。 「ぐわあああああああぁぁぁぁぁぁぁ」三体の悲鳴が広場中に響き渡る。この暴風は凍気を含み対象者を凍てつかせ、更には氷の刃で切り刻む。たった1ラウンドの攻撃で三体はボロボロにされてしまった。 「終わったな。全く、早く着くのも善し悪しだ。パルナの聖騎士どもの手助けをする事になったのだからな」 「そう言うなよ。パルナとは友好関係を築いているのだ。それに良い肩慣らしになったのではないか」 ぼやくサイアを窘めるのは戦士風の人間である。いや魔法衣を着ているから魔術師、召喚術士か。 「ではゾルゲイ、後はパルナの聖騎士に任せて我々は居住区とやらに行こうか」 「いや、まだ終わってないようだ」 歩み寄ってきたサイアに後ろを向くように促すゾルゲイ。振り返ったサイアの目には、青年ジャイアントが立ち上がろうとする姿が映った。 「ほぉ、レジャネーヤ・バーニャをくらってまだ立ち上がれるとはな」 「お…俺は…逃げな…い」 「やめておけ。お前は戦える状態ではない」 サイアの言葉は賞賛であった。それ程の破壊力がある術式だったのである。その証拠にオーガーとビーストはその衝撃で気を失ったままなのだ。 そして忠告をしたのは、必殺の術式を耐えた青年への情けであった。立ち上がりはしたものの出血や骨折などのダメージによって満足に戦える状態ではないのは、周囲で見守っている者達の目にも明らかだった。 「倒…す」 それでも青年の目から戦いの火が消える事はなかった。フラフラしつつも拳は前に向けられ、その視線はサイアの動きを逃すまいと注がれている。 「…そうか、では一撃で倒してやろう」 サイアはこの青年のようなタイプが嫌いではない。恐らくは良い戦士になる素質があると思った。しかし向かってくるのであれば倒さねばならない。 「コピーヤ・ソルンサ(太陽の槍)」 サイアは大きく右拳を引き、左手の平を青年へと向ける。引いた拳には膨大な熱量が灯り、周囲の気温が何度も上がっていくのを観戦者は感じた。 「今度は熱?炎?あの巨人って氷を使うだけじゃないの?」 「北の巨人族は、世界に散らばる遍く全ての巨人族の特性を学ぶと聞いた事があります。そして会得した特性の数が彼らの称号になると」 リオの疑問にアウルムが昔に読んだ書物の記憶を呼び戻しながら答える。 「先程サイアさんはエンテ・セルピと名乗りました。私の記憶だとこれは六を現す古代語のワードです。恐らくサイアさんは六つの巨人族の特性を会得しておられます」 アウルムの記憶通り、北の巨人族は世界に散らばる同胞の特性を身につけようと研鑽をする。その数は十三種。これを達人といえるレベルまで昇華して初めて会得したと認められる。そのための修練法が受け継がれているのだ。一つの特性を会得するまでの平均期間はおよそ十年。長寿の巨人族ではあるが、修練が困難な事もあって高位称号を持つ者は少ない。そんな巨人族の中でサイアは六つの特性を合わせて十年で会得した。 「では行くぞ」 サイアの重心が前に移動していく。刹那、加速した。 青年は動かない。いや動けない。 高熱を帯びた拳が青年を捉え…
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