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Oリフォール王国の賢王 リフォール王国− リフォールは聖王国パルナの西方に位置する王制国家である。周囲の聖教国家群と比べてもその歴史は長く、現国王のフェーゴ・ライオット・リフォールは十八代目となる。実に五百年の歴史を刻めたのはリフォールの王位継承の仕組みにあるのかもしれない。”王族還り”と呼ばれるこのシステムは、一度王族でなくなり、努力によって王族に返り咲いた者のみが王になれるというものである。一度王族を離れる事、そしてどのような分野であっても一流となる研鑽を積む事で、歴代の王は世襲制のそれでは身につかない覚悟を持って国政に臨むのである。 宮廷内・謁見の間− 今大会の大陸大会規模が確定するより少し前に、宮廷魔術師であるジンクム・ヒッペルドルムは国王の急な召集を受けていた。何事かと急ぎ馳せ参じるジンクムは、その召集の目的に察するものがあった。 「よく来たな。ジンクム」謁見の挨拶をするジンクムに労いの言葉をかけると、フェーゴ王は人払いをして早々に本題に入った。 「この度の召喚術士技量競技大会についてだが、既に現況は存じておるな?」 「はい、大変危険な大会と考えておりますが、それにリフォールも参加すると聞いております」国王の話はジンクムの予想通りであったが、何故国王が自分を招集したのかはわからなかった。 「その通りだ。ジンクムも参加している宮廷魔術師による審議会でも意見が分かれたと思う。当初の魔術師ギルドからの案内状レベルであれば、そのまま審議を重ねて出た判断を私も尊重しただろう」 「!? 何かあったのですか?外交上の…問題でしょうか」宮廷魔術師達を気遣うフェーゴ王の言葉に、ジンクムは国王の他者には話せぬ苦悩を感じ取っていた。 「察しが良いな。それでこそジンクムだ。では話そうか」 召喚術士技量競技大会は、当初は魔術師ギルドと魔術学院による文字通りの技量比べを目的とした大会概要であった。ところが事態は突然激しく迷走していく。リフォールを除く西方の国家群のほぼ全ての国が参加したいと言い出したのだ。 魔族戦争以来、西方に限らず召喚した魔物による軍備増強は各国が課題にしていた。そして三年前の災厄の魔王戦では、やはり召喚した魔物の活躍が目立っていたのだ。更にはその舞台となった聖王国パルナの政策転換による魔物や魔族の軍部徴用の解禁。外交や諜報活動によって、それを知り得た西方の諸国は不安を抱えていたのである。 「それにしても、ほぼ全ての国がと言うのは異常ですね…」不安を口にするジンクムに、フェーゴ王は手を打って賛同した。 「その通りなのだ。いくら他国の軍事力に脅威を感じているとはいっても、大会参加自体にリスクがある事がわからないわけではないだろう」 その通りなのだ。ド・レインでルリカが説明していたように、手札をどの程度見せるのかが大変デリケートな課題になってくる。そして勝っても相手国に恨まれるかもしれないs、負けたなら侮られるかもしれないのだ。 「優勝のメリットというのも…」 最優秀召喚術士のメダル− だけである。莫大な賞金もないのだ。 「ここで隣国に疑心暗鬼が広がってはならない。そこで外交担当に働いて貰ったのだがな」 ため息をつくフェード王は、肩を落とした。 「結果としては西方国家群を代表してリフォールが参戦する事になったわけだ」 リフォールは外交も一流である。従って各国の悩みを深く調査し、落とし所を探した。その結果、リフォールが身を切る事となったのである。 「それは仕方ありません。かなり高難度ではありますが…」 「いや、もう少し聞いて欲しい」ジンクムの言葉をフェード王が珍しく遮った。 「まず参加者だが、これは改めて宮廷魔術師達に審議して貰おうと思っているが、すぐに結論が出るだろう。恐らくはリュネイ・バインドが推挙されるはずだ」 「ええ、そうなるかと」 バインド家は優秀な魔術師の家系であり、代々宮廷魔術師の高席次に着いている。これは世襲という事ではなく、優秀な素質を更に研鑽してきた結果であった。そしてリュネイはそのバインド家においても百年に一度の逸材と言われていた。 「西方諸国がリフォールへの一任で納得した理由は、昨年のリュネイの活躍にあったのだ」 「魔穴(通称:ホール)の多発事件の事ですね」 魔穴とは魔界と人間界を行き来できるホールの事である。気象で言うところの竜巻のように気まぐれに生じる迷惑な現象であるが、魔王クラスになると固定したホールを造る事が出来、三年前に災厄の魔王は同時に五つのホールを造って自軍を人間界に出撃させた。 「魔穴が多数発生する事例はあまり無いそうだな。そこで対応に困っていた諸国にリフォールは援軍を派遣したわけだが、この時に召喚術で魔物を巧みに操ったリュネイの評判がすこぶる良かったのだ。ある国では英雄扱いであったようだな」 「リュネイは優秀です。特に召喚術については、世界を見ても類を見ない術式を会得しています。若さ故か、やや視野が狭いところが難点ですが」 ジンクムは公正な男だ。フェーゴ王の話にも要点を的確にまとめて返した。いやそれでも少し甘い評価か。リュネイ・バインドは確かに将来を有望視される優秀な宮廷魔術師であるし、自他共に認める秀逸な召喚術士である。しかし、やや…いやかなり自己愛が強かった。周囲に優秀である事を常に賛美されていたい、それが心の声でなくて実際の言動に表してしまうのだ。また自身の優秀さに絶対の自信を持っているため、ジンクムが指摘しているように視野が狭くなる嫌いがあった。 「うむ。正式な勅命は宮廷魔術師の審議会の報告が出てからにはなるが、リュネイをエントリーする事になるだろうな。それに異論は無い。問題はな、ジンクム。諸国は既にリュネイがエントリーすると思い込んでいる事なのだ」 「可能性が高い…ではなく、確定していると?」 思い込みはあるだろうから、些細な問題に思えるかもしれない。しかし外交部の情報によると、それは思い込みのレベルを超えていた。正式に応援の新書を送ってくる国まであったからである。 「それだけではないのだ。現在、召喚術士技量競技大会はリフォールが主導して行われる事になっておるのだよ」 「!? まさか…そんな事は」ない…と言いかけてジンクムは止まった。あの東の大国や北の大国までが参加する事を決定した。ギルド主催であれば、それはなかったはずだ。 「勿論、各所に確認を入れたが、誰も事の流れを把握できていなかった。なのにこの不可思議な大会は開催に向けて動き続けておるのだよ」 ジンクムはここにきてフェーゴ王の真意を悟った。何か得体の知れない者の陰謀の可能性が高い。しかし、いったい誰が?いや何の目的で? 「人か魔族か、しかし不確定要素が高いやり方です。目的がわかりません」 「うむ。そこでジンクムを呼んだ理由だがな…」 正直に心の内を明かしたジンクムにフェーゴ王は静かに自身の考えを話し始めた。 全てにおいて一流であるリフォール王国は、その名に恥じない分析をしていたのである。
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