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魔石将(ジュエルズ)は魔石器(ジュエル・オーブ)の加護を得て戦う。その能力を解放する事でその全能力を扱えるわけだが、解放すると魔石が持つ魔物の特性が全身を侵し、肉体もそれに応えるように変異してしまう。そして元の姿に戻れなくなる可能性が出るため、彼らにとって”解放”は事実上の奥の手なのである。それを計算ではなく、我を忘れる程の怒りでショハムは発現させた。 『うおおおっっっっっっっっっっっっっ!!』 ショハムの体が変異していく。それは四足獣であり、縞の模様の尻尾が生えて…。一件はネコ科であるが、それは虎や豹とは違っていた。 「なるほど…”雷獣”ですか。それで呪いも扱えるというわけですね」 Kが雷獣と呼ぶそれは、主に東の国で祀られる神獣の一種である。神と言ってもあらゆる点で生物を超越した存在の神ではなく、超常的な力を行使するために人から畏れ敬われる存在という意味での神である。故に、益であれば”祝い”と称され、害であれば”呪い”と称されるわけだ。 『呪雷砲! この空間ごと消し炭と化せ!術士!!』 ショハムが構えるランスに尻尾が巻き付くと、凄まじい放電反応が見られた。”呪雷”がランスへと、砲身へと集約されていく。 「…かまいませんよ。貴方は”何も知らないようだから”」 涼しげにKが話す。先程の接触で何かを感知したのか?しかしその話し様は、当てが外れたという失望感もあるようだった。 「となると…次に優先すべきは魔石の回収ですかねぇ」 目の前の超攻撃態勢のショハムを見据えたまま、Kは次なる行動を思案していく。 『舐めやがって!!死ねぇぇぇぇ術士ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!』 そして“それ”は放たれた。直線上ではなく放射状に! 空間ごとというのは、はったりでは無かったのである! 呪いが込められた怒りの雷光がKに迫っていく!!しかし… ”キュイイイィィィィィィィィン” Kの目の前に幾多も同時展開された”魔方陣”に当たると、その全てが吸い込まれた。 『あ… な… なん…』 言葉が出ないショハム。 空間に、しかも何ら道具も用いずに、直に魔方陣を展開するなど常識外なのだ。 しかも、防御魔法の類いだったら呪いの特性で蝕む事も出来る呪雷であるのに、それを無効化するのもありない事だった。 そして余波の魔力の波動もKの周辺で消え失せる。その時にショハムは微かな魔力の揺れを感じた。 『何かいる…のか?』 ショハムが感じた僅かな違和感。 それほど希薄な魔力波しか出さない存在がKの側にいる!Kは既に魔物を展開していたのだ。 『では先程の…』 配下の魔石兵が倒れた現象。あれもKの周りにいる魔物によるものだったと合点がいった。 『卑怯な…』 「いきなり配下四人に襲わせるのは宜しいと?」 ショハムの呟きにKがあきれ顔で返す。 魔石将は、それを纏う者自身が熟練の戦士であり、魔石器の加護と合わさったそれは一国の将軍クラスを超える。更に解放状態となれば、それは上級魔族とも渡り合える実力を備える。そのショハムの攻撃が悉く無効化されている。ショハムが動揺し発言を間違えるのも無理からぬ事であった。 「さて… 一撃は一撃ですので!」 割と子供な理論を持ち出した後、Kは”死神の大鎌”を水平に構えた。 「対妖戦闘術 ”雷滅の大鎌”(ライトニング・クラウン)」 『か…は…』 ショハムが固まった。やっとの思いで息を吐き出す。それはKの術式が発動したのと同時に空気が変わったからだ。 『一瞬で…魔素が…』 消えた− この空間中の魔素が。そればかりではない。ショハムが張った”呪雷陣”も消え去った。いや… 『吸収…したのか?』 Kが構えている”死神の大鎌”に強大な魔力が集積している。それが解答であるのは間違えない。 『では先程の魔法陣も…。呪雷砲を無効化したのではなく、吸収したというのか!?そんな事が出来るわけが…』 「では参ります!」 『くっ… うわあああああああ!!!』 ショハムは咄嗟に”呪雷砲”を発動させた。それも最大出力で。それは限界まで絞り出した命の咆哮! 攻撃時であれば、先程の魔法陣も展開できぬだろうという事と、襲ってくるKの一撃を減弱する目的である。そのため先程とは違い、一点集中型として直線上に放った! ”キィィィィィィィィィィィィン!!!” Kがカウンター気味に大鎌を振い、金色の雷刃が放たれる。 その刃は呪雷砲の光線を斬り裂き、吸収し、更に大型化してショハムを魔石器ごと両断した。 『あ…がぁ…』 雷滅の刃は、両断と共にショハムの魔素を吸い尽くし、そして体を内から焼いていく。 「悪鬼を滅する”雷術”です。邪を祓うと言われてます。この力で魔法石が浄化されると良いんですがねぇ」 ショハムの全身を雷滅の炎が焼き付くし、そこに残ったのは”トパーズ”の魔法石のみであった。 「ふむ… まだっぽいですね。これは厄介な」 ショハムと対峙した時よりも顔をしかめたKは、拾った魔法石を壺に収めた。”浄化壺”という曾祖母マナの持つアイテムである。 「これで浄化されると良いなぁ…」 そう言いながら、部屋の偽装を解除する。するとSALONの特別室としての機能が復活した。サキュバスが本来の能力を行使しやすいようにと、魔素が多い魔界の一部に空間転移でくっつけたこの部屋が大立ち回りには丁度良い場となったのは皮肉な事である。
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